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2023 Fiscal Year Research-status Report

Theoretical Studies on "Plurilingualism/pluriculturalism" in the Language and Cultural Education in the European Schools (Schola Europaea)

Research Project

Project/Area Number 19K00796
Research InstitutionBunkyo University

Principal Investigator

山川 智子  文教大学, 文学部, 教授 (80712174)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2025-03-31
Keywords欧州評議会 / 複言語・複文化主義 / CEFR / 多文化共生 / ヨーロッパ学校(Schola Europaea) / 死生学 / 医療現象学 / 人生会議(ACP)
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、ヨーロッパ学校の実践に「複言語・複文化主義」がどのように取り入れられているか、その実態が学習者の「ポートフォリオ」にどのように記録・管理され得るかを検討し、日本への応用可能性を探ることにある。ヨーロッパ学校の理念は、多文化共生を目指す日本の言語教育を考える指針ともなる。言語教育はあらゆる教育の基本となるので、ヨーロッパ学校の教育実践を検討し、現代の日本の教育への示唆を導きたい。この目的のもと、以下のように研究を進めた。
①ヨーロッパ学校設立史の振り返りと「複言語・複文化主義」の日本での受容の在り方に関する考察。②「複言語・複文化主義」と死生学・医療現象学との連環の模索。③「多文化共生」の理念と現実とのギャップを埋める考え方としての「複言語・複文化主義」の提案。
①に関しては、ヨーロッパ学校設立史をヨーロッパ統合史に位置づけた。また「複言語・複文化主義」の日本における受容の問題点を指摘した。この概念が時代や地域をこえ、異文化間の折衝でも活用しうる概念であることを指摘した。②に関しては、死生学の領域で議論されている「人生会議(ACP)」において、「複言語・複文化」的な考え方が必要であることを示した。相手の尊厳を守る姿勢を貫くことが相互理解の基本となるという「複言語・複文化主義」の理念が「人生会議(ACP)」における対話にも通底することを示した。③に関しては、「多文化共生」の理念と現実とのギャップを埋める考え方として「複言語・複文化主義」を提案し、論考を発表した。相互理解を深めるには「言語」以外の要素である「言語外的条件」(オストハイダ テーヤの研究より)が重要な役割を果たすことを「複言語・複文化」の視点から議論した。
2023年度の研究成果は、講演2件、ワークショップ講師1件、国際学会発表2件、国内学会発表2件、図書(共著)1件で公表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2019年度、2020年度はコロナ禍で研究計画を大幅に変更し、研究資料の収集に注力した。2021年度、2022年度は収集した資料を領域ごとに分類・体系化するとともに、現象学の視点を加えた研究を行った。「対話」における他者との向き合い方に関して、現象学の「本質観取」の考え方を取り入れ、理論的に検討した。2023年度は、前年度までに収集した資料を活用し、これまでの「複言語・複文化主義」研究を総括する講演や学会発表を行った。さらに、「多文化共生」の理念と現実とのギャップを考える論考をまとめることができた。その一方で、ヨーロッパ学校そのものに焦点をあてた論文を執筆することができなかった。その主な理由として、①勤務校の学内業務が急増し、研究時間を十分に確保できなかったこと。②家族の介護が本格化し、本人も体調を崩してしまったこと。③「複言語・複文化主義」研究を総括する講演や発表の準備が重なり、論文執筆に時間を割けなかったことなどがあげられる。このような状況であったが、「学内業務」や「介護」という営みの中に「複言語・複文化」的コミュニケーションを考える要素があるという「気づき」を得ることができた。また、周囲の人々の支えがあり、結果として他領域にまたがる研究のネットワークを構築することができたのは幸いであった。

Strategy for Future Research Activity

これまでに収集した資料の体系化、研究成果の公表に注力する。具体的には以下のように進める。
①「複言語・複文化主義」という概念が現象学や死生学とも連環していることを示す。これらを包括して議論することで新しい領域が開拓できるかを検証する。他者へのリスペクトを意識した言語文化教育が平和構築に繋がることはこれまでにも指摘されてきたが、ウクライナや中東情勢などを考える上で、こうした言語文化教育がさらに必要とされている。現代社会が直面する様々な課題に取り組むにあたり「複言語・複文化主義」が重要な示唆を与えてくれることを具体的に論じていく。②ヨーロッパ学校の理念を日本で考えるため、国内の言語文化教育の調査を行う体制を整える。状況把握能力を育むための対話を取り入れる授業が増えているので、事例を集める。③コロナ禍でのオンライン対応から浮上した課題、刻々と変化する世界情勢を「自分ごと」として考えるための言語文化教育の在り方を検討する。他者の立場に立ってことばを使うことを実感するための対話の場を設けるとともに、「複言語・複文化主義」が持つ現代史的意義に関する様々な論考の共有と理論化、それを実践に結び付けるためのデータベース化を目指す。
引き続き、「複言語・複文化主義」を現象学や死生学等の学問領域と関連させていく。社会科学的な分野で行われることの多い「ヨーロッパ研究」を、「複言語・複文化主義」を鍵概念とした人文科学の視点からアプローチし、新たな領域を開拓していく。

Causes of Carryover

2023年度は収集した資料の整理と体系化に注力した。現地調査は実現できなかったので渡航費や宿泊費等の支出はなく、次年度使用額が生じた。これらは次年度の調査や成果発表のための費用にあてる。調査にあたっては、細心の注意を払い、体制を整える。すでに体系化した資料や研究者間のネットワークを活用し、研究を遂行する。

  • Research Products

    (8 results)

All 2024 2023

All Presentation (7 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Invited: 3 results) Book (1 results)

  • [Presentation] 一人ひとりの複言語能力を育むための外国語教育 ━ こどもの視点から2023

    • Author(s)
      杉本孝美、山川智子、中井精一
    • Organizer
      日本国際理解教育学会 第32回大会
  • [Presentation] CEFRにおける複言語主義の検討と、日本社会の受容の在り方について2023

    • Author(s)
      山川智子
    • Organizer
      中央大学全学連携教育機構 FLP(ファカルティリンケージ・プログラム)中川康弘ゼミ「特別講演会」
    • Invited
  • [Presentation] 言語教育政策の視点から考えるドイツ語の授業の現状と課題2023

    • Author(s)
      山川智子
    • Organizer
      JACET東アジア英語教育研究会・言語政策研究会・海外の外国語教育研究会の 共催研究会「基礎から対話型AI(生成AI)までー言語・教育の現状と課題」
  • [Presentation] 欧州評議会が提唱した「複言語・複文化主義」の日本における可能性2023

    • Author(s)
      山川智子
    • Organizer
      Japan: Pre-Modern, Modern, Contemporary(オンライン) Bucharest University of Economic Studies, Center for Japanese Studies
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] ドイツ語学習と 欧州評議会の「複言語・複文化主義」2023

    • Author(s)
      山川智子
    • Organizer
      ゲルマニスティンネンの会関東支部研究発表会
    • Invited
  • [Presentation] Verschiedene "Widerstaende" bezogen sich auf das Kriegsgefangenenlager Bando2023

    • Author(s)
      Yamakawa, Tomoko
    • Organizer
      German Studies Association of Australia (GSAA) International Conference, The University of Sydney
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 「共生社会で活かされる『複言語・複文化主義』的発想 ━ 現象学の視点から持続可能な対話のことばを探す」━ わたしも、あなたも、あのひとも、みんなで社会をつくる。2023

    • Author(s)
      山川智子
    • Organizer
      セミナー・ワークショップ (CHEERS 読書会)「共生社会のためのことばの教育」読書会(第7回)<主催>CHEERS 江崎由美子、<協力>明石書店
    • Invited
  • [Book] 言語教育のマルチダイナミクス ━ 多様な学びの方向性2024

    • Author(s)
      杉野俊子(監修)、田中富士美、柿原武史、野沢恵美子(編著)飯野公一、 磯崎みどり、井上恵子、内海朋子、岡戸浩子、蒲原順子、祁答院惠古、齋藤浩一、須永恵美子、田中藍渚、長谷川瑞穂、原隆幸、樋口拓也、三村千恵子、宮里恭子、森谷祥子、山川智子
    • Total Pages
      320
    • Publisher
      明石書店
    • ISBN
      9784750357256

URL: 

Published: 2024-12-25  

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