2019 Fiscal Year Research-status Report
瞳孔径拡張による外国語理解力の向上: 過剰学習と間隔反復による
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19K00801
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
窪田 三喜夫 成城大学, 文芸学部, 教授 (60259182)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 瞳孔径拡張 / 脳内音声処理 / 子音分別能力 / ミスマッチ成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
心理生理学的指標の1つである瞳孔径拡張の測定を行うことによって、日本人英語学習者が音声の習得、特に英語子音の上達が促進されるのかを調査した。これによって、伝統的な外国語学習法である長時間の意識的音声トレーニングによるのではなく、瞳孔径を拡張させる無意識的な方法によって自然に短期間に外国語の音声識別が促進されることを研究の目的とした。これにより、新しい外国語の指導方法の提案を目指すことになる。すなわち、瞳孔径を随意に変動させる学習方法により、効果的な外国語学習・ 記憶が促進されるかを検討した。 第一の実験として、どのような図形を提示すれば被験者の瞳孔径が収縮するのか、あるいは拡張するのかを様々な図形と時間的なタイミングを用いて瞳孔径実験を行った。その結果、極小の丸円(2mm)から、時間的遅延がない状態で、極大の20cmの丸円を提示することにより、瞳孔径拡張が被験者全員から認められた。ただし、2つ目の極大の丸円の中に、極小の丸円を残像として残すのが重要なテクニックであることを実証した。それにより、視点が1つの実験中で動かないようになるからである。 第二の実験として、異なる子音のペアーを学習者が聴取している時に、英語能力の低い学習者(TOEIC 599点以下)の場合、丸円拡大による瞳孔径拡張が英語子音の無意識的認知につながるかを検討した。Pre-testと比較し、瞳孔径拡張操作によって、post-testの子音識別する得点が上昇した。これにより、音声識別の困難な学習者は瞳孔径拡張により、自然に識別できる能力が備わっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の第一年度として計画を立てた内容を順調にこなした。根本的に極めて大切な研究上の意志決定である瞳孔径の機器選択に重点をおいた。日本内外の5社の製品を専門家の立場から吟味した。特にsampling rateを重要視しながら、データの安定性とデータ収集、分析の面から選定した。つぎに、実験に使用する図形の収集とその予備調査にも時間をかけた。さらに、瞳孔径拡張の実験においては、20ペアーの音声識別から2ペアーを選択するため、音声識別に関する行動的、また、脳機能イメージングの先行研究を詳細に調査した。その結果、2ペアーの子音を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、音声のみならず、文法と語彙に焦点をあてる実験も実施していく計画である。さらに、英語だけではなく、日本語学習者と第一言語話者との違いに注目したデータ収集と分析も視野に入れている。さらに、「過剰学習」と「間隔反復」を組み合わせた実験を構築し、長期的な言語記憶の維持に関する過程を探求する複合的な研究計画を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の当該研究課題において購入使用した機器は、瞳孔径測定に特化した簡便型の視覚研究装置であった。それによって、次年度使用額が生じた。次年度の使用計画として、視覚研究を更に深めるために、視点移動計測装置とソフトウェアの購入を計画している。
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