2020 Fiscal Year Research-status Report
瞳孔径拡張による外国語理解力の向上: 過剰学習と間隔反復による
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19K00801
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
窪田 三喜夫 成城大学, 文芸学部, 教授 (60259182)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 瞳孔径拡張 / 脳内音声処理 / 子音分別能力 / ミスマッチ成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
心理生理学的指標の1つである瞳孔径拡張の測定を行う上で、どのようなタイプの音声や文法によって、脳内ミスマッチ成分が検出されるのかを調査した。3種類の脳実験を実施した。 (1)英語使役動詞は原形不定詞を伴う。to不定詞を挿入することで文法的に不適格となる。この言語現象をミスマッチ実験に適用した。対照群として、一般動詞を用いた。この英語使役動詞ミスマッチ実験の結果、to不定詞挿入という文法的逸脱が極めて大きな脳反応を引き起こすことを明らかにした。 (2) 日本語の係り結びに関する脳内ミスマッチ反応を測定した。「全く」という副詞は否定語を伴うが、肯定語「ある」の場合は文法的に不適格となる。この日本語文法ミスマッチ実験の結果、文法的逸脱語の場合、極めて大きな脳磁場反応を引き起こした。 (3) 英語の前方母音であるhigh母音と mid-high母音に関する脳ミスマッチ音声実験を実施した。 high母音が高頻度刺激で、mid-high母音が低頻度刺激であるセッション1と、high母音が低頻度刺激で、mid-high母音が高頻度刺激であるセッション2を日本人英語学習者に与えた。その結果、セッション1で、極めて大きな脳磁場反応が測定された。ペアーとして2番目に提示される低頻度刺激が、聞き手の音声システムにない音声の場合、その音声への慣れがないために、脳細胞が活発に反応することを明らかにした。 これら3種類の脳実験結果に基づいて、被験者の瞳孔径収縮・拡張の実験内容が決定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の第2年度として計画を立てた内容を順調にこなした。極めて大切な研究上の意志決定として、瞳孔径の拡張実験を行う際の基本的データ収集を行った。脳磁場測定実験と近赤外分光法実験の2種類を行って、どのような刺激が瞳孔径拡張の実験において有効であるのかを検討することができた。これら3種類の実験結果に基づき、音声と文法に焦点を当てる研究第3年目の実験内容を構築していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、音声、文法と語彙に焦点をあてる瞳孔径実験を実施していく計画である。さらに、英語学習者と日本語学習者の比較という第一言語話者との違いに注目したデータ収集も行っていく。学習過程に焦点を当てるため、「過剰学習」と「間隔反復」を組み合わせた瞳孔径実験と行動実験を構築し、長期的な言語記憶の維持に関する言語習得過程を探求する複合的な研究計画を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、脳ミスマッチ反応の基礎研究を行ったため、瞳孔径計測実験に必要な実験機器、分析ソフト、被験者謝礼などにかかる経費は必要でなかった。これらの予算は次年度に使用する計画である。
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Research Products
(3 results)