2021 Fiscal Year Research-status Report
スマートフォンを用いた動画制作活動が英語学習者のスピーキングにもたらす効果
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19K00812
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
桐村 亮 立命館大学, 経済学部, 教授 (40584090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣森 友人 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (30448378)
吉村 征洋 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (90524471)
仁科 恭徳 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (00572778) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英語スピーキング / 動画制作 / 外国語教育 / 動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スマートフォンを使った動画制作活動が英語スピーキングに与える影響を主に動機づけの視点から分析している。これまでに収集した質問紙および課題実施時の記録を整理・分析したところ、課題の事前・事後の変化、および実験群(動画での発表)と統制群(対面発表)の差において、全体としては統計的に際立った特徴が見られていない。これについては、データ収集の方法やタイミングによって、他の要因が結果に影響を及ぼした可能性も否定できなかったため、その点の修正が必要であることがわかった。一方で、学習者を一定の傾向からクラスターに分けて分析することで、英語の重要性を感じていながらも、英語スピーキングに関して不安が高い学習者群については、動画制作が不安を和らげる効果を持つ可能性があることがわかってきた。たとえばプレゼンテーションを行う前の練習課題として、動画制作が有効であることが示唆される。また、動画制作を行なわなかった群と比べて、動画制作を行った群は、自主的に話す練習を行う回数が多く、自主的に課題に取り組む時間も長くなるという結果があり、これも動画制作が有効である可能性を示唆するものである。もともと英語スピーキングを得意とする群は、直接オーディエンスを前にして話すことを好む傾向もあるため、課題として動画制作に取り組むことについては、好意的に捉えないケースも浮かび上がってきた。このことから、動画制作は、一律に効果を期待するものではなく、学習目的や学習者のタイプによって、適切な使い分けが必要であろうという点が今後の検討課題として示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
直近2年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で授業形態に大きな変更があり、当初予定していた実験状況を確保することが困難となった。特に、本研究で統制群として対面実施の発表課題を実施することとしていたが、これが実施できず、比較検討するデータの収集ができなかった。スマートフォンで動画制作を行う課題自体は継続して実施しており、そのデータの蓄積はできている。その動画課題においても、一定数の学習者はマスク着用のまま発信しており、表情や口の動きといった項目には影響を及ぼしているとみられ、データの分析には注意が必要となる。また、ほとんどの授業がリモート実施に置き換わり、学生間で直接対話が著しく制限される中、コミュニケーション手段の一つとして動画の制作・相互視聴を行うことの意味合いが変わっている可能性についても考慮が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により期間を1年延長することとなった。新たな統制群のデータ収集は実現していないが、これまでの実践調査で、学習者が課題に取り組んでいる際に記録した振り返りの記述や、学習者同士が相互評価を行った際の記述が大量に収集できている。これらの記述からは、学習者がそれぞれの過程で何に気づき、何を学んでいるかが記されている。これら記述データから抽出される要素を、これまでの数量的分析結果と合わせることで、動画制作をスピーキング学習に取り入れることの教育的効果をより詳細に論じていく。また課題の計画から実施に向けての注意点なども教育的示唆として議論する。スマートフォンで学習者が楽しんで簡単に動画を制作し、共有するという活動がどのように外国語教育に効果をもたらすかを議論・発信することで、現在、各教育機関で実施が拡大するオンライン授業における有効な学習活動の選択肢として提案することを目指す。新型コロナ感染症拡大の影響で学会等での発表を予定通り確保できなかったが、これについて、2022年度は、状況を見て、発表および情報交換の場を安全に確保できるよう引き続き検討し、実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、当初予定の課題実施および学会参加ができなかったため、研究期間の延長を申請し、1年延長することとなった。次年度は、これまでの収集データの整理と分析を行い成果発表を行う。
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