2019 Fiscal Year Research-status Report
Effects of vervalization of noticing on acquisition of pragmatic routines
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19K00837
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大須賀 直子 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (40514162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | pragmatic routines / 気づき / 口頭談話完成タスク / 気づきの言語化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、データ収集のツール作成とパイロットスタディをおこなった。 まず、ツールは2つ必要であった。1つは発話中のpragmatic routinesの使用を調べるためのもので、もう1つは英語母語話者のモデル発話を聞いて実験参加者が何に気づくかを調べるためのものである。1つ目のツールは、コンピュータ使用の口頭による談話完成タスク(Multimedia Elicitation Task-MET)で、参加者に場面説明をして、その場面に自分がいたら何と言うかを答えてもらうものである。今回は、自分が以前の研究で開発したMETを土台にして、routinesが含まれる可能性の高い場面を中心に構成した。また、母語話者のモデル発話提示用のツールは、routinesが含まれるモデル発話を母語話者の音声で録音し、写真や字幕とともにコンピュータで提示するようにした。 パイロットスタディは12人を対象に、pre-test、post-test、delayed-post-testの3回の調査を以下の手順で行なった。まずpre-testでは、METを使って参加者から発話を抽出する。その直後に英語母語話者によるモデル発話を聞いてもらい、気づいたことを言語化して書いてもらう。約1週間後にpost-testを行ない、同じMETを使って発話を抽出し、気づきの効果があるかどうかを調べる。そして、約1カ月後にdelayed-post-testを行ない、気づきの効果が残っているかどうかを調べる。またdelayed-post-testの直後に、routinesについての使用経験や知識について尋ねるアンケートに答えてもらう。 収集した発話データは文字に起こし、現在分析中である。現時点でわかっていることは、学習者は形式よりも内容に気づく傾向がある、気づいても必ずしも発話しない、気づきの効果はある程度長続きする、などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツールの作成については、予定通りおこなうことができた。当初は直接本調査を行なう予定であったが、パイロットスタディによって発話抽出ツールやデータ収集方法が妥当であるかを確認してから本調査を行なった方が、より精度の高い研究結果が得られると考え直し、今年度はパイロットスタディを行なった。パイロットスタディの結果から、ツールの修正すべき点や、データの収集方法の問題点が浮かびあがってきたので、本調査に活かしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、パイロットスタディの分析を完了し、その結果を論文にまとめる。また、パイロットスタディの結果を踏まえてツールやデータ収集法の改善を行ない、本調査を行なう。ただし、新型コロナウィルスの影響で本調査実施が遅れる可能性はある。 現時点で考えられる改善点の1つは、同じMETを3回使うことによるpractice effectを防ぐ手立てをすることである。一番実行しやすい方法は場面の順序をシャッフルすることであるが、さらに良いのは、同じroutinesだが少し内容が違うMETを3種類用意することであろう。ただし、METの作成には大変な労力がかかることから、吹き込み内容を変えるなど部分的な修整で対応できないかを検討したいと考えている。2つ目の改善検討点は、実験参加者にたいしてモデル発話を提示する際に、より明示的にroutinesを示すべきかどうか、という問題である。先述のとおり、パイロットスタディでは、参加者は形式よりも内容に先に注意を向ける傾向があった。本研究の目的は、気づきの言語化がroutinesの習得にどう影響を与えるかを探ることなので、routinesに注意を向けさせるような仕掛けが必要かもしれない。例えば、モデル発話の字幕のroutinesの部分だけ色を変えるなど、の方法を検討している。3つ目の改善点はpost-testとdelayed-post-testの間隔を1カ月よりももっとあけることである。パイロットスタディでは間隔は1カ月だったが、かなりの参加者は自分の回答を鮮明に覚えており、介入の長期的な効果を測るためには、1カ月では短いということがわかった。 当面は対面による調査が実施できない状況なので、本調査の準備をする一方で、パイロットスタディの結果を論文にまとめたり、さらなる文献調査をおこなうなど、現状況でできることを着実に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は本調査ではなくパイロットスタディをおこなったため、参加者人数が予定より少なく、謝金にかかる費用が少なかった。また、データの文字起こしも自分で行なったために人件費がかからなかった。次年度は、本調査を行なうため、参加者の人数も多く、謝金、人件費が多く発生するので、それに使用する予定である。
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