2020 Fiscal Year Research-status Report
日仏バイリンガル話者の異文化間語用論能力の解明と教育への応用
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19K00857
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
原田 早苗 (井口早苗) 上智大学, 外国語学部, 教授 (30286752)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 異文化間語用論 / ターン・テイキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語とフランス語のバイリンガル話者の異文化間語用論能力を調査するため、長年フランスで生活し、職場および家庭を含む多様な場面で両言語を日常的に使う日本人に半構造化インタビューを実施してデータ収集を進めてきた。しかし、今年度はコロナ感染拡大のため海外渡航不可の状況が続き、フランスでの調査を続行することができなかった。 上記の理由から、今年度は昨年度に実施したインタビューの分析を中心に行ったが、特にターン・テイキングの問題を取り上げて考察した。外国語学習者にとって円滑なターン・テイキングは難しく、様々な問題を含んでいる(Sacks, Schegloff and Jefferson, 1974; Murata, 1994; Beal, 2010; Kecskes, 2015)。日本人フランス語学習者に関しても同様であり、ターン・テイキングの様々なストラテジーのうち、特に困難なものについてその要因を分析し、日仏バイリンガル話者のデータと比較した。フランス語学習者の大学生にフランス人の会話コーパスを視聴してもらい、ターンテイキングについての意見をアンケート形式で集めた。その結果、相手のターンが終わらないうちに発話する場面について否定的な反応が多く、強い抵抗感がみられた。しかし、Beal (2010)によると、フランス人にとって発話の重なりや遮りは相手の発話への高い関心を示すものであり、参与者同士で会話を共に作り上げていくための要素である。この点について、在仏歴の長い日本人バイリンガル話者もインタビューで日本人大学生と同様の意見を述べている。インタビュー回答者の社会的語用論能力は大学生よりも優れているのにも関わらず、ターン・テイキングについては似たような意見があるのは大変興味深く、今後の分析にethos communicationnelの観点を含めていく必要性を感じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度はコロナ感染拡大のため海外渡航不可の状況が続いたため、フランスでの調査を行えなかったのが遅れをとっている大きな理由である。しかし、昨年度行ったインタビュー調査のデータ分析をさらに進めることができ、また本研究の目的の一つでもある日本人フランス語学習者の語用論教育に目を向けて、日仏バイリンガル話者との比較研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
在仏歴20年以上で就業経験のある日本人はフランス在住のことが多く、今年度に引き続き来年度もフランスに渡航できない状況が続く場合は、調査の内容やデータ収集方法の再検討を迫られる可能性がある。今後の状況によっては、たとえ年数が短くてもフランス滞在歴のある日本人フランス語話者および日本在住のフランス人日本語話者に調査対象を広げる可能性もある。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ感染拡大のため海外渡航不可の状況が続き、旅費の支出がなかったのが主な理由である。また、インタビューも実施できなかったため、謝金の支出もなかった。2021年度についても現時点では海外渡航の見通しが立っていないが、海外渡航が認められ次第、フランスでの調査を再開する予定でいるため、旅費と謝金の支出が見込まれる。
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Research Products
(2 results)