2021 Fiscal Year Research-status Report
対話的学びにおける使用言語の違いが協働的ライティング活動に与える影響
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19K00876
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久保田 章 筑波大学, 人文社会系, 名誉教授 (30205132)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 協働対話 / 言語モード / ライティング |
Outline of Annual Research Achievements |
中学・高校では「英語の授業は英語で行う」という基本方針が示されているが、学習者の英語によるコミュニケーション活動のあり方については議論が定まっておらず、特に学習者の熟達度と母語である日本語使用の可能性に関する実証的な研究はほとんどないと言える。本研究の主な目的は、(1)ペアで行うライティングの事前活動中の使用言語の違い(英語か日本語)によって、作業中のコミュニケーションの質や量は異なるか、 (2)コミュニケーションの質的・量的な違いは、最終課題である英語のライティングの質や量に影響を与えるか、の2点について検証することである。 2021年度もコロナ禍は解消されず、対面によるコミュニケーションのデータを収集することはできなかった。そのため、過去に実施した予備的調査において収集されたデータのうち英作文のデータを用い、「正確さ」「流暢さ」「複雑さ」の客観的指標によって量的に分析した。 この予備的調査の参加者は大学1年生60名で、30組のペアを構成した。30ペアは15組ずつ英語か日本語のいずれかを用いて、4コマの絵を見ながら対話し、最終的に一連の絵のストーリーを協力して英語で作文する活動を行った。英語グループと日本語グループの中から対話の内容が比較的協力的と判断された各5組の英作文を分析対象とした。その結果、英語グループの場合、総語数についてはペアごとの差が小さかったが、「流暢さ」を示す英作文の「平均総語数」については、日英語のグループ間で有意な差は見られなかった。同様に、「正確さ」を示す「総語数に対する文法的誤りの数の割合」、「複雑さ」を示す「T-unitの数」に関しても、事前活動中の言語モードの違いによる統計的な差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度もコロナウイルス感染対策として3密を避ける必要があり、対面でペアを組み、口頭でライティングの事前活動を行うことは困難であった。また大学でも授業を引き続きオンラインで実施することになったため、リモートによるデータの適切な収集方法について検討が必要となった。 オンライン上でデータ収集する場合、参加者の活動状況を個別に逐一観察することが難しいため、活動の途中で参加者が支援情報をWEBから入手するなどの可能性を否定できない。そのため、事前活動中のやりとりを音声で記録するだけでは十分ではないと考えられたが、一方で、どのようにすれば、データの真正性・信頼性を確保できるかという点については、依然として課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度にもコロナウイルス禍は解消されないと予測されるため、対面によるデータ収集の代替として、あらためてオンラインによるデータ収集を行うことを計画している。得られるデータの質についてはさらに検討が必要な点もあるが、基本的には発話の音声データを利用し、それを文字化して分析対象とする。分析方法は、従来と同様、使用言語のモードの違いによる発話の質と量を発話機能の観点から比較する。また、作文のデータについても、「正確さ」、「流暢さ」、「複雑さ」の客観的指標を用いた分析と、英作文分析ソフトCriterionを用いた分析を併用する。それらの結果を照合し、発話データと英作文データの間にどのような関係が存在するか検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度も新型コロナウイルス感染症のパンデミックのため、予定していた英国の大学への出張ができなかった。また当初、英作文分析ソフトCriterionを利用して過去に収集した予備的作文データを分析することを予定していたが、実現できなかった。これまでの分析によって、予備的データだけでは研究上不十分な点もある程度判明したので、2022年度にはオンラインにより、リモートでデータ収集する予定である。得られたデータをCriterionなどを利用して分析するなど、2021年度の残額を活用する予定である。
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