2020 Fiscal Year Research-status Report
英語モダリティの派生、解釈、そして習得に関する統合的アプローチ
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19K00888
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
松谷 明美 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (60459261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 千佳子 東京純心大学, 看護学部, 教授 (80350528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法助動詞 / モダリティ / 統語論 / 意味論 / 認知言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語と日本語のモダリティに関する言語現象を比較分析し、認知・運用システム内の表現者の捉え方等が、モダリティを含む文が生産、解釈されるプロセスにおいてどのような影響を及ぼすかを明らかにし、日本語母語話者による英語の言語習得のプロセスを探ることが目的である。 英語の法助動詞について、Palmer (2003)に従い、話し手の心的態度を表明する手段としてとらえ、高橋(2021)では、Leech (2004), Szymanski (2019), 澤田(2019)の研究をふまえて、なぜ肯定形のcan +完了形は用いられないかという点から、コーパスおよび英語母語話者からのデータを分析考察した。そして、①存在的モダリティの意味での過去は、法助動詞couldで表すことが出来るため、肯定文であるcan + 完了形は出現しない、言い換えるとcan have beenでは存在的モダリティの解釈は難しい、②否定文および否定表現を含む文の場合、認識的モダリティとなり特定性がでてくるため、完了形の出現度合いが増えるという結論が導き出された。 松谷(2021)では話し手の判断等を示す、認識的解釈の法助動詞について、態や時の副詞との関連を探った。日本語受動文において、話し手の判断、感情等認識的解釈(神尾(1989),久野(1990),高見(2011)等参照)はどのようにして生じるのか等に関して、日本語母語話者からのデータや先行研究で取り上げられた事例を分析考察した。そしてmetonymyによって動機づけされるnominalization(柴谷(2018a, 2018b)がComplementizer Phrase (CP)に起こり、さらに、Grohmann (1999)とGrohmann and Etxepare (2002)がドイツ語やスペイン語に関して提案しているように、統語・意味・運用の要素が融合しているExclamation feature(E-素性)がCP照合されることで、 話し手の心的含意が派生のプロセスにおいて生み出されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の松谷は、認識的解釈を含む文について、態・副詞との共起に焦点をあて、日本語、英語、ドイツ語、スペイン語等のデータを分析考察することで、話し手の心的解釈が生み出されるプロセスを明らかにした。分担研究者の高橋は英語の法助動詞のcan + 完了形の認識的解釈および否定との関連に関する実証的な研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ取り上げていない英語と日本語の法助動詞について、英語のコーパス(COCA等)と日本語のコーパス(中納言等)から抽出されるデータを認知言語学、生成文法、機能文法の視点から比較分析し、考察することで、今まで考案してきた派生・解釈プロセスを修正する。さらに日本語母語話者が法助動詞を含む文を習得する際のプロセスに応用するために、インターネットを駆使した英語と日本語の母語話者に調査実験を実施し、検証を行いたい。
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Causes of Carryover |
世界的コロナ感染のため、国際会議・学会での研究発表ができなかったため。
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