2019 Fiscal Year Research-status Report
定型言語としての句動詞の第二言語習得・処理・産出及びその体系的指導について
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19K00889
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
奥脇 奈津美 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (60363884)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 語彙 / 定型言語 / 英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
定型言語(FL: formulaic language)は,メンタルレキシコンに貯蔵された,繰り返し同じ並びで現れる複数の語のかたまりのことである母語では広く使用されるが、 第二言語(L2)では運用が少なく,上級レベル学習者でも習得が難しいとされる.また,何をもってFLとみなすのか研究ごとに定義が必要であり,特定方法も確立されていない.今年度の研究では,日本人英語学習者がアカデミックライティングでどの程度FLを使用できるのかを考察し,熟達度の向上によってその運用が上がるのかをみたが,Okuwaki (2015)で収集したエッセイデータをもとに,それとは異なる分析方法を試し,同様の結果が得られるかどうかを検証した. 具体的には,学習者が使用したFLの特定を英語母語話者の判断に委ねた以前の分析方法で得られた結果について,本年度は,The Phrase List(Martinez & Schmitt, 2012)を使用してそのデータを再分析し,同様の結果が得られるかどうかを検証し,特定方法の違いが分析結果にどのような違いをもたらすのか,方法の妥当性についても考察した.その結果,これまでの結果と同様に,習熟度や語彙知識が上がれば定型連語の使用も並行して増えていくということはないことがわかり,特定方法によって大きく異なる結果にはならないことがわかった.また,研究の目的によって,適切な特定方法を選択することが肝要であることを提案した. この結果については,全国英語教育学会第45回青森研究大会で口頭発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,第二言語学習者から集めたライティングのデータについて,以前の分析方法とは異なる方法を用いて,頻度リストを使用した分析の妥当性を検討することができた.二つの分析方法で得られた結果を比較すると,ほぼ同様の結果となったことから,この方法の妥当性を一定程度確認することができた.また,同様に,学習者の定型言語使用の程度と発達についてこれまでに得られた結果も概ね妥当であることがわかった. また,次年度への研究に向けて,句動詞の統語構造に関する文献研究,第二言語学習者による句動詞の習得や使用に関する文献研究を進めることができたが,これらを総括した文献研究として次年度に執筆予定である論文の準備を整えることができた.さらに,今後のデータ収集に向けて,実験計画を策定しすることから始まり,調査のためのマテリアル作り,そしてパイロット調査に向けての準備と,これらをほぼ整えることができた. 一方,本年度末に行う予定であったパイロット調査については,コロナパンデミックの影響で延期したが,これについては次年度に行うことにしている. 以上のことから,進捗状況としては,概ね計画通り,順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,定型言語のなかでも特に句動詞に着目し,その理論的研究を進めながら,学習者によるその処理,理解,産出についての実証研究を進めていく.まずは,パイロット調査を実施し,その分析をすすめ,学会発表や論文報告へつなげたい.その後,本格的な実証実験のため,実験計画やテスト項目を精査し,実験ツールを作成し,調査協力者を募ってデータ収集を開始する予定である. ただ,コロナパンデミックの影響があるため,現段階においては,当面,特定の場所に協力者を集めてデータを収集することは難しいという課題がある.そのため,協力者からのデータ収集については,オンラインで行う可能性も模索する必要があると思われる.同様のことがオンラインでどの程度可能であるか,実験計画にどのような修正が必要になるのかを考え,できうる方策を施した上で進めていく必要がある.もしくは,オンラインでの実証実験の準備が整わないうちは,その分を文献研究の時間に回すこともできると考えられるので,このような状況においても,継続的に研究を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
本年度,統計用のソフトウェアを購入する予定であったが,以前に購入した古いバージョンのものを使用していたため購入はしなかった.また実験用のソフトウェアも購入予定であったが,そのソフトウェアを使用しない調査に注力していたため未購入である.これらについては,次年度に本格的に実証実験を始めるのに合わせて,最新のバージョンのものを購入する予定である.また,本年度末に行う予定であったパイロット調査がコロナパンデミックの影響でできなかったため,そこで必要になるはずだった謝礼については,次年度に必要になる経費である.
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Research Products
(1 results)