2021 Fiscal Year Research-status Report
定型言語としての句動詞の第二言語習得・処理・産出及びその体系的指導について
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19K00889
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
奥脇 奈津美 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (60363884)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 語彙 / 句動詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
イディオムやコロケーションなど、第二言語習得研究の分野では2000年以降、formulaic sequences(定型的な語の並び)の処理やその使用に関する研究が盛んに行われている。コーパスを利用した言語研究から、言語使用の多くの部分が定型的な語の並びから成っているいうことが明らかにされたが、第二言語においては、その使用割合が小さく、発達も遅いことが指摘されている。 今年度は、実証的な研究として、英語圏へ長期間留学した日本人大学生について、語彙知識・使用、ライティング力などの言語能力がどのように変化するのかをみた。特に、留学を通して得られる言語経験が学習者にもたらす効果について、語彙領域に注目してデータ分析を行った。その結果、英語圏での長期滞在を通して言語経験を豊富に得ることで、語彙力の受容的な側面は大きく向上する一方、産出的な側面においては、半年間という期間では大きな変化を期待することは難しいということがわかった。留学中においても 語彙やformulaic sequencesの学習に意識を向け、レジスターを意識した学習、低頻度の語彙、アカデミック語彙への意識を高め、その意図的学習が不可欠であることを提案した。この結果を12月のオンライン学会で発表した。 さらに、理論的な研究として、句動詞の統語的な特徴やnon-compositionality(構成要素からでは意味を構成できないこと)についての文献研究を進め、その複雑な性質から、第二言語学習者にとって句動詞の習得や使用が難しくなっているということを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度もコロナ禍の影響が続いており、対面でのデータ収集ができなかったため、文献研究を行うことが主な研究内容となった。句動詞の統語的特徴やcompositionalityに関するもの、および第二言語における句動詞の使用や回避、処理過程に関する文献研究を進めた。また、以前に収集したデータについて、第二言語の発達にともなう語彙使用の変化という観点から見直し、第二言語使用の receptive な側面と productive な側面から分析を行い、それを総括してオンライン学会で発表した。上述したように、コンピュータを利用しての参加者から個別にデータを対面で集める実験は遂行できなかったが、その準備として、実験のためのマテリアルを再作成するなどを行った。次年度もコロナの影響は続くことが予想されるが、今年度よりは調査協力者を募りやすく、データ収集が行いやすくなるだろうことから、可能になればすぐにでも始めることにする。以上のことから、現在の進捗状況としては「やや遅れている」が、大きく状況が変わらなければ、次年度には予定を遂行できる見込みがある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、対面で個別に行うコンピュータを使用したデータ収集ができなかったが、次年度にそれができるようになったら、迅速に開始する。オンラインで実験を行う準備も始めていたが、実験方法はどちらかに合わせる必要があるため、対面で行えるようであればそれを優先することになる。調査協力者の募集も可能になることから、時間に余裕をもって早めに開始したい。一方、長期的にデータを収集する必要がある調査については、オンラインでの収集方法を採りたい。状況が再び変わることも考えられるが、データ収集については状況に合わせて可変的に行えるものではないので、その場合は言語的分析の研究を行う比重が多めなるだろうが、いずれにしても、状況に応じて継続的に研究は進めていく。 今後は,formulaic sequences のなかでも特に句動詞に重点をおき、言語的研究及び実験を通しての実証的研究を継続していく。具体的には、日本人英語学習者の句動詞の処理、理解、使用について、コンピュータを利用しての判断テストや言語処理における反応時間の測定を対面で行う。また、オンラインで行う予定であるが、複数の学習方法の効果を検証するため、数週間の継続学習による効果を複数のテストを通して考察していく。これらの結果を分析をし、学会発表を行い、論文報告へとつなげたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、今年度はできなかった調査があるので、そこで必要になるはずであった参加者への謝礼や分析補助への謝礼の執行がなかった。これは次年度に執行する予定である。さらに、学会発表がオンラインに切り替わったり、数回ある予定であった海外出張ができなかったりと、旅費の執行がなかった。次年度は、状況が大きく変わらなければ、数回の海外出張と国内でも対面での学会参加の予定があるので、そこで旅費の予算執行をすることになる。
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Research Products
(1 results)