2019 Fiscal Year Research-status Report
Investigating sociopragmatic competence in spoken corpora of Japanese learners of English
Project/Area Number |
19K00891
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
三浦 愛香 立教大学, 外国語教育研究センター設置準備室, 准教授 (20642276)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 学習者コーパス / 社会語用論的能力 / 要求の発話行為 / ポライトネス / 中間言語語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、学習者コーパスを用いた社会語用論的能力の特定に向け、予備調査の実施の他、過去の分析結果を整理・再考し、今後の研究の方向性を位置づけ概観を捉えた。要求の発話行為例におけるポライトネスの判断調査では、初級者(TOEIC120-405)約60名及び中級者(TOEIC525-650)約70名に、返品交換交渉、試着の依頼、購入表明の異なる社会的場面における様々な要求の発話を提示し、その適切性を判断してもらった。大学英語教員20名の判断調査(Miura,2017)によるランキングと比較すると、初級者よりも中級者の加重平均値が教員のそれに近い傾向にある。初級者は教員や中級者によって適切性が高いと判断された項目を低いと判断し、低いと判断された項目を高く判断した。よって学習者の社会語用論的判断能力は、初級者になるほど教員が想定するスタンダードから乖離する傾向が高まると言える。一方、著者による一連の先行研究結果から、A2(初中級)学習者は、要求の負荷度が高いwantを間接的な言語項目(would like, like, look for, can, could)に自己訂正する傾向が見られ、B1(中級)学習者は丁寧度の高いcanやcouldの使用頻度がA2よりも3倍高い。習得段階が上がるにつれて、ポライトネスの意識が高まり、相手のメンツを脅かす行為(Face Threatening Act)を回避できる社会語用論的能力の向上があったとも想定できるが、A1(初級)学習者は、語彙文法能力が未発達なため使用された語用言語学的項目から社会語用論的能力を推察すること難しいことが判明した。なお、これらの分析結果を総括すると、Bardovi-Harligら(1998)の先行研究にあるように、日本人英語学習者が持つ社会語用論的判断能力とその発信能力には乖離があることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和元年度から二年度前半においては、本研究の基盤となるアノテーション・スキームの構築と言語情報の付与を行う予定であった。しかし、本研究の方向性を位置づけ概観を捉えるために、新たな先行研究の収集、予備調査の実施、統計手法の見直しを含めた過去の分析結果を整理・再考し、それらを基に学会発表と論文執筆に時間を割くことになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は、元年度の研究に基づき、以下を完了することを目指す。 学習者554名について以下の言語情報を付与(手作業によるアノテーション) i)学習者の全発話の言語機能の分類と抽出:発話の状況(購入の意思表示、試着の依頼、品物についての質問、支払い方法についての質問、背景の説明、値引き交渉、返品交渉等)を特定。ii)学習者の要求の発話行為で使用される言語項目の分類と抽出:要求の発話の主要部で使用された言語項目を基に、要求の発話行為を「直接的ストラテジー」、「慣例的な表現を用いた間接的なストラテジー」、「前者2つのいずれにも属さないもの(不完全な発話)」に分類。iii) 発話の展開パターンの分析:ii)要求のストラテジーとi)周囲の発話(要求を外的に修飾する機能を持つ)の組み合わせパターンを観察して発話の展開を分析。iv)試験官の対話の修復パターンの分析:学習者がタスクを完成できるよう、試験官がどのように学習者との対話を修復しているかのアノテーション・スキームを確立し、言語情報を付与。
なお、本年度は、AILA(国際応用言語学会)にて初級者(TOEIC120-405)約60名及び中級者(TOEIC525-650)約70名を対象とした要求の発話行為例におけるポライトネスの判断調査(予備調査)の結果を発表する予定であったが、令和三年度に延期されたため、アノテーション・スキームや新たなコーパス構築に応用できるよう、本調査の分析を引き続き進めていく。
|
Causes of Carryover |
令和元年度は、研究協力者に依頼する予定であった言語情報付与(アノテーション)の再確認と再現を行わなかったため、主に、人件費・謝金が生じなかったので残金が発生した。令和二年度は、参考図書の購入や論文の英文校正の依頼費用、(国際・国内学会が実施されれば)学会への参加費及び交通費、アノテーションが完了していれば研究協力者に対する再確認・再現の謝礼に助成金を使用することを計画している。
|
Research Products
(6 results)