認知的参画を促す英語教育のための協働手法を中心とした教授方略の研究

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K00916
• Research Institution: Fuji Women's University
• Principal Investigator: 工藤 雅之 藤女子大学, 文学部, 教授 (10321374)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 英語教育 / 協働学習

Outline of Annual Research Achievements

コロナ禍の影響から、本研究助成で外部に公開できた成果は無かった。この状況下で（対面における）協働学習を土台とする研究の計画が大幅に変更を余儀なくされ、協働学習の現場での観察や調査が全く進まなかったことと、大学運営でも非常事態であり職務に大幅な変更が生じ研究に費やす時間が確保できなかったことが理由に挙げられる。

しかし、今年度まで本研究助成で購入した文献などを利用した、欧米での認知的没入（cognitive engagement）に関する文献研究はある程度進んだ。文献研究から分かったことは、教育現場におけるengagementは学習者の行動を分析するにあたり多岐に渡り、本研究で着目する心理概念である認知的没入は、認知的没入という動機づけや学習の自律性に関わる複合構造的な概念であることが分かった。また、この心理概念と行動と直接結びつける研究は未だに多くなく、広く研究の余地が残されており、多くの心理概念を複合的に捉え認識する必要があることが分かった。学習者が実際に学習環境に従事する際にどのような内的・外的な観察が可能かが本研究の中心課題であることが確認された。

上記のように外部に公開できるようなデータの取得には至らなかったが、パイロット研究とも言える実際の英語教育を利用した協働学習環境の小規模調査は行われた。この調査から上の複合構造的な概念を実際の学習者の行動から観察できる可能性があると考え、認知的没入の中心構造である自己効力感を中心に協働手法を可変し調査を行った。特別に教育的な介入をしない場合、認知的没入を伴う協働は起こりづらいことが観察された。つまり、学習における自律的な認知的没入を伴う協働は、非常に稀にしか観察できない事象であり、認知的没入を観察するためには正当な教育的な介入や統制が必要であり、教育環境での認知的没入を引き起こす協働デザインの必要性を示唆された。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

研究の進捗は、非常に遅れていると言わざるを得ない。コロナ禍で対面授業や実践の観察を予定していた教育現場、加えて海外の事例研究などの機会が失われたからである。オンラインに移行しながら協働の教育的効果を理解する手段を探っているが、現状では外部に発表できるレベルには到達していない。

Strategy for Future Research Activity

ここまでオンライン環境が高等教育に染み込んでくる事態は想定外であったが、この状況を生かしてオンライン協働での認知的没入に焦点を絞り直すことは可能であると考える。対面と非対面では、認知的没入を引き起こす要因は異なる事が考えられるが、協働学習の基礎的な知見を活かしつつ、CSCL（Computer Supported Collaborative Learning）にあるオンラインでの特異性などを勘案しながら、我が国の英語教育に応用可能な協働のあり方について研究したい。

Causes of Carryover

昨年度までの収支計画では、旅費等を計上していたが、コロナ禍が収まらなかったこともあり、支出に至らなかった項目が存在する。特に旅費については、十全のコロナ感染症予防が取れる条件が整えば、速やかに実行し、今年度以降適切に支出できるよう研究を続行させたい。