2020 Fiscal Year Research-status Report
社会主義人口論と家族計画運動をめぐる世界史:1974年の世界人口会議を中心に
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19K00941
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
中地 美枝 北星学園大学, 文学部, 准教授 (90567067)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソ連 / 人口 / 世界人口会議 / 家族計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、科研申請当初に予定していた海外の史料収集がコロナ禍で不可能となる中、2020年度は主に二つの研究活動を行った。 一つ目の活動は、単著『Replacing the Dead:the Politics of Reproduction in the Postwar Soviet Union』 の再校である。本書は第二次世界大戦後のソビエト連邦における人口政策と、それがジェンダーや社会へ及ぼした影響について、連邦内の状況を中心に分析するものであるが、これは1970年代にソ連が世界の人口政策の議論の中でとった国際的な立場を考察する本研究にとって、重要な背景を提供する。再校の過程で、本研究のテーマに深くかかわる歴史的展開について、以前より理解を深めることが出来た。特に1960年度以降にソ連の人口学者の間で派閥の形成が進んでいた可能性について新たに認識できたことは有益であった。マルチアルヒーフの手法が困難になる中、この認識が今後の研究の進め方を決める上で一つの手掛かりになると考えている。単著は2021年2月にオクスフォード大学出版会から刊行することができた。 二つ目の活動は刊行された資料の収集である。年度の早い時期に海外や国内で史料収集する可能性がほぼ無いことが明らかになったため、夏以降は居住地にとどまりながら主に二つのテーマについて、出来る限りの資料を収集することに専念した。第一のテーマはソ連の人口学者の派閥の形成であるが、これは上記の認識に基づいて設定した。第二のテーマは人口抑制政策への世界的な反対運動の広がりである。それぞれのテーマについて、書籍や学術論文などを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
採択当初に目指していたマルチアルヒーフの手法を使った研究、という観点から考えると、コロナ感染が広がって渡航や国内の移動が出来なくなった2019年度の終わりから2020年度にかけて、予定していた海外や国内の史料館における史料収集が全く行えず、進んでいない。しかし今年度は研究方法を少しずつシフトし、上記の様に二つのテーマに絞って刊行物に依拠した史料収集や分析を始めている。これにより1960年代から1970年代初めにかけて連邦内外で展開された人口抑制論や家族計画に関わる議論の状況について理解を深めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在直面しているのは、今後どこまで研究方法を変える必要があるかという問題だ。2021年度中の海外での史料収集の可能性についてもあまり期待できそうにないため、採択期間の最終年度である2022年度に延長申請することを今から予定している。そして2022年度以降に海外での史料収集が可能になることを想定しつつ、それが難しくなった場合、また渡航出来たとしても史料収集が十分に実施出来ない場合の対処も視野に入れ、アルヒーフの史料に依存せずとも一定の成果を出せるように、様子を見ながら研究の方法をさらにシフトさせていくつもりである。これに伴い、今後研究の問いの調整も必要になるかもしれない。また、国内にある史料の収集と分析を今後も続けていく。札幌にはソ連期の刊行物の所蔵で国内最大規模を誇る北大の図書館があるため、現状を考えれば恵まれた環境にあると言える。しかし国内の他大学が所蔵していて学外に貸し出しされない史料も存在するため、もし今年度中に国内の移動や研究目的の滞在が可能になれば、収集目的で国内出張をしたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の中、採択時に予定していた国内外での史料収集が不可能となったため。
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Research Products
(1 results)