2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00947
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
山本 唯人 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 助教 (50414074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 星志 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00817231)
小薗 崇明 東京成徳大学, 人文学部, 助教 (60768240)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 空襲体験記 / 原稿 / デジタル化 / 空襲記録運動 / 火災域 / 遭難地 / 避難経路 / QRコード |
Outline of Annual Research Achievements |
約400点の空襲体験記原稿について、残存状況の確認を行い保存封筒への保管を終了した。このことは資料の基礎的状況の把握と、デジタル化を進めるための物理的状態が確保できたという意味で、今後の研究の土台となる成果である。次に目録の作成、原稿スキャンによるデジタル化に着手した。また、『東京大空襲・戦災誌』第1巻に掲載された127点の体験記について、大学生の協力のもと文字入力を行った。 東京空襲を記録する会については、運動史資料の把握と『東京大空襲・戦災誌』の編集者と新たにコンタクトをとることができた。コロナウイルスのため聞き取り実施までは至らなかったが、これまで知られていなかった事実を発掘する可能性のある成果である。 広島平和記念資料館、韓国の戦争記念館など、国内外の先行事例の視察を行った。 『東京大空襲・戦災誌』第1巻の印刷版の体験記のうち、深川区・城東区について、どのような分析が可能かをさぐるためのパイロット研究を行った。消防記録による初期火災域と体験記データによる大規模遭難地、生存者の避難経路を重ね合わせた地図(初期火災地図)を作成し、3月10日空襲の地理的な避難パターンを推定した。今後、原稿のデジタル化を進め、データベースを整備した場合、どのような分析結果を導き出せるかを検討する重要な試行錯誤となった。この研究の中間成果を、資料所蔵施設である東京大空襲・戦災資料センターの常設展示の一部に応用し、研究成果を広く一般に還元するとともに、原稿データの教育プログラムへの応用について初期的な研究も行った。研究協力者の早乙女愛により、QRコードと電子書籍リーダーのアプリを組み合わせて、体験記データを博物館内でモバイル端末表示するシステムの研究も行った。 研究協力者である赤澤史朗を報告者とする研究会を開催し、戦争体験記をめぐる最新の研究成果を吸収できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関係者の高齢化を考慮し、「東京空襲を記録する会」関係者の聞き取りを1年前倒して始め、体験記原稿のデジタル化については、2020年度の継続課題とする方針に組み替えて、作業を進めた。運動史の聞き取りは予備調査で成果を上げたが、コロナウイルスの影響で、実施を延期しているため、2020年度はまずこの聞き取りの実施が課題になる。 原稿のデジタル化は、2019年度に資料整理の完了、目録の作成、原稿のスキャン、文字入力に着手できた。その作業を2020年度に継続して、デジタル化を完成させることが課題になる。 先進資料館の視察は、当初、2019年度と2020年度の2回の実施を計画していたが、資金面のバランスなどを考えて中途半端に分散させることはやめ、メンバー全員の視察は2020年度以降、広島の1か所にしぼることにした。そのため、2019年度は分担者による予備的視察を広島と韓国で行った。 深川区・城東区の体験記データのパイロット研究は、ある地域の体験記を網羅的に読み込むことで、どのような分析ができるか、またどのようなデータベース項目を設ければ有効な分析につながりやすいかを検討する機会となった。この中間成果をもとに、データベース化の方針を具体化していくことが2020年度の課題になる。また中間成果を、資料所蔵施設の展示に活用したこと、QRコードシステムにより体験記読み取りの装置を構築したことは、原稿データの教育プログラムへの活用方法の研究につながる成果となった。これも、継続して研究を行う。 このように、2019年度は、運動史の研究を一部前倒すとともに、ボリュームの大きい体験記原稿のデジタル化を2020年度への継続課題としたことにより、全体として無理がなくなり、予備研究を進める余地も生まれ、おおむね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度から作業に着手した体験記原稿の目録作成、スキャン、文字入力については、2020年度中に終了すべく体制を組んで遂行する。 東京空襲を記録する会関係者の聞き取りは、延期の原因になったコロナウイルスの影響が継続しているが、実施可能になり次第、2020年度中に実施する。 先進資料館の視察については、コロナウイルスによる移動・資料館見学の困難などを考慮し、2020年度は視察の事前準備として、広島平和記念資料館学芸員とのオンラインによる交流・研究会などを実施する。本格的な現地調査は、その成果を踏まえて、2021年度に実施することを目標とする。また全国の博物館・資料館の戦後75年の企画を可能な限り情報収集する。 データベースの作成については、本格的には原稿のデジタル化の終了を待って作業に着手する必要があるため、2020年度は、初年度に行った深川区・城東区についてのパイロット研究を、さらにもう一歩具体化した個別研究を行い、データベース化および分析の方針を詰めていく。具体的には「深川区森下・高橋」界隈、「川南国民学校・都立化学工業学校」界隈など、いくつかの地区を設定して、そこでのデータベース作成、体験記分析の予備的研究を実施する。 原稿データの公開、教育への活用方法についても、継続して予備的な研究を実施する。
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Causes of Carryover |
2020年度以降に予定していた研究課題の一部を前倒して2019年度に行うことにし、代わりに、2019年度中に完了する予定にしていた体験記原稿のデジタル化を2020年度までの継続課題として行うことにしたため。2020年度に体験記原稿のデジタル化を実施し使用する計画である。
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