2021 Fiscal Year Research-status Report
比較史的考察からみた中世西国の地域権力の特質と外交活動
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19K00954
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 幸司 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (30364128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大内氏 / 菩提寺 / 土岐氏 / 大蔵経 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、コロナ禍のため遠方への史料調査は2020年度に引き続き行えなかったが、以下の研究報告と論文を公表することができた。 まず、西国日本の地域権力の中核ともいえる大内氏の菩提寺をテーマとした論文「大内氏の菩提寺と東アジア」を公表した。当該論文は、大内氏歴代が創建する菩提寺は、大内氏のアジア外交を意識して開山の人材が選択され、菩提寺群は大内氏の外交人材供給の場となっていたことを論証したものである。また、大内氏が活用していた中世日本最大の国際貿易港博多にかかる概説も公表している。 さらに、九州大学大学院地球社会統合科学府提携講座において、「九州「戦国大名」のアジア外交」「豊臣大名とアジア」を概説し、現段階でイメージしている戦国織豊期西国大名のアジア外交のありようについて素描した。 西国日本の地域権力の外交のありようを相対化するために、畿内以東の地域権力とアジアとの関わり方について、美濃土岐氏と朝鮮との関わり方を事例として考察した。当該テーマについては、以前、博士論文にて取り扱ったことがあるが、今回はその後に知り得た知見などを加味して大幅に増補した。その際、土岐氏が朝鮮から獲得した大蔵経を収めた南宮社に残された関連文物の調査を行った。関連文物は、南宮社の旧神宮寺であった真禅院に所蔵される一切蔵経訓転供養塔であり、ご住職からの聞き取りも含めて調査を行うことができた。この成果は、7月に開催された九州大学韓国研究センター主催シンポジウム「中世の日韓交流と対馬海峡沿岸社会」(於・オンライン会議室)において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、当初、想定していたような史料調査は実施できていないが、入手可能な史料と実施可能な現地調査を行うことで、一定程度の研究成果を実現している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきた西国日本の地域権力のアジア外交の研究成果を土台としつつ、西国日本の地域権力のアジア外交のありようを、室町幕府などのそれとも比較検討する総合的な考察を完成させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、当初の計画通りの史料調査や現地調査ができていないため、繰越金の発生が生じた。しかし、コロナ禍も3年目となり、大学も対面教育が主流となりつつあるため、過去二ヶ年間に実施できなかった調査を今年度に実施していこうと考えている。
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Research Products
(3 results)