2019 Fiscal Year Research-status Report
近世・近代における琵琶湖のヨシ、およびヨシ地の史的研究
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19K00957
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
東 幸代 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (10315921)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヨシ / ヨシ地 / 内湖 / 琵琶湖 / 史料目録 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間1年目にあたる本年度は、2019年5月26日、同6月30日、同7月28日、同9月1日、同9月29日、同10月27日、同12月22日、2020年2月2日、同2月29日、同3月29日(計10回)にわたってヨシ問屋・西川嘉右衛門家を訪問し、文書蔵の中に収蔵された古文書の概要を把握した。概要調査の結果を踏まえ、ヨシ関係文書が少しでも含まれれば、ヨシ関係以外の古文書が入っている古文書収蔵容器も調査対象とする方針を決定し、順に古文書調査カードを作成した。参加者は、研究代表者、滋賀県立大学教員1名、滋賀大学経済学部付属史料館研究員1名にくわえ、滋賀県立大学学生部生数名である。 現地で作成した古文書調査カードの情報は、学部生がマイクロソフト・エクセルに入力し、古文書目録を作成した。 本年度の成果として注目されるのは、ヨシの注文等に関する大正年間の大量のハガキの発見である。西川嘉右衛門家は、現在は産地問屋として素材ヨシの卸商をしている家であるが、大正期の一時期にヨシ簀の発注ハガキが多くのこされており、加工(委託であろう)までをおこなっていたことがわかる。また、大正期には、東海地方や京都市内、大阪市内の建具販売商に対して建具用ヨシを、現宇治市周辺の茶商に対して茶簀用ヨシを、広島県熊野町の毛筆職人に対して毛筆鞘用ヨシを販売することが、商取引の中心であることがわかった。また、東京などに販路を広げようと尽力するさまをうかがうことができる古文書も発見できた。西川嘉右衛門家は、現在、金沢市内などにもヨシを販売しているが、歴史的にみると、販売商品や商圏のあり方に変遷があることが想定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の一つが、古文書目録の作成であるため、ほぼ順調に古文書調査をおこなうことができたことで(2)の評価とした。ただ、申請当初、生産面の研究に2年間、流通面の研究に2年間をあてる予定で、本年度は生産面の分析に力点を置くつもりであったが、調査対象となった古文書の中心が流通関係のハガキであったことから、はからずも流通面の分析を先行させる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、本年度と同じメンバーで西川嘉右衛門家の古文書調査をおこない、古文書目録を作成するとともに、調査済みの古文書を分析し、ヨシの生産、もしくは流通の解明をおこなう。ただし、COVID-19感染予防のため、学生らの参加を要請することが難しく、作業効率が想定より低下することが考えられる。そのため、調査日数を増やすなど柔軟に対応していく必要がある。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染予防のため、年度後半の調査に学部生や滋賀大学経済学部付属史料館研究員の参加を見合わせてもらったため、人件費関係費用の一部が使用できなかった。また、年度末に予定していた資料保存機関での調査が、同理由で中止となったため、旅費の執行ができなかった。 次年度は、月に一度のペースで現地における古文書調査をおこない、学部生に古文書調査カードのデータ・ベース化を進めてもらう。古文書調査カード作成のペースをあげることで、入力数も増加すると考えられるので、次年度使用額は人件費として利用する計画である。また、資料保存機関への出張も、状況をみながらおこないたい。
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