2021 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの命と人権に関する地域史研究ー近世・近代・現代社会の連続面と断絶面を考える
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19K00961
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
大杉 由香 大東文化大学, スポーツ健康科学部, 教授 (60297083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沢山 美果子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 客員研究員 (10154155)
飯田 直樹 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 主任学芸員 (10332404)
茂木 陽一 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (80200327)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公共圏 / 警察社会事業 / 地方格差 / 子どもの権利 / 名望家 / 捨子(棄児) / 都市下層社会 / 教育権 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に関しても、各自が問題関心に沿って、フィールドワークを行い、近世および近代日本における子どもの社会的立位置について研究を進めた。そして2021年12月23日には各自の研究成果発表会をzoomにて行った。これらの研究を通して明らかになったのは、日本においては、近世においては「相身相愛」「世間の義理」が子どもの命をつないでいたのに対し(沢山美果子「近世の捨子と世間」【2021年12月23日、科研報告会】)、近代以降は特に都市部で共同体的な相互扶助が薄れると同時に、その状況に対応した救済が比較的早い時期に模索されていたことである(茂木陽一「三野村利左衛門と三井組育児方について」、『地研年報』26号、2021年12月、三重短期大学地域問題総合調査研究室)。しかし茂木が指摘したように、三野村の死で親元での育児に対する経済的援助といった慈善事業は立消となり、いわば民間における児童救済は、養育者がいない棄児か、災害で親族や住む場所を失った児童、もしくは親が貧困・病気故に養育が不可能と認められた場合に限定され、親が曲がりなりにも養育している場合の援助については、公的・民間を含め、第1次大戦期から戦間期まで待たなければならなかった。こうした援助の具体的事例に関しては、飯田直樹が「近代大阪における露天託児実践の源流」(上記科研報告会)で明らかにした。 しかし戦間期以降も親が不十分な形で養育している場合の公的援助は十分とは言えず、その点については研究協力者の樋上惠美子が「1930年代の大阪の母と子の生活実態-なぜ大阪市の周産期死亡率は改善しなかったのか-」(上記科研報告会)で実証した他、大杉由香も「統計から見た戦前日本における不就学問題」(『環境創造』28号、2022年3月、大東文化大学環境創造学会)で、1930年代においても毎年10万人程度の無学者が出ていたことを明らかにした。
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Research Products
(16 results)