2021 Fiscal Year Research-status Report
平安期仏教説話の社会史思想史的考察-日本霊異記・三宝絵を中心に-
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19K00966
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本郷 真紹 立命館大学, 文学部, 教授 (70202306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 憲一 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (00425026)
駒井 匠 四国大学, 文学部, 助教 (30794945)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 平安時代 / 仏教 / 王権 / 仏教説話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安期に成立した仏教説話集『三宝絵』『日本霊異記』の両書について、歴史学・仏教学的視座からの検討を行い、①9・10世紀の王権と仏教の関係、仏教思想受容の社会的実態を解明するとともに、②歴史学・仏教学的視点を重視した『日本霊異記』下巻の注釈書を刊行することを目的としている。 第3年度目となる2021年度(令和3年度)は、次のような研究成果をあげることができた(口頭発表除く)。上記①に関わり、研究代表者の本郷は、単著として「『日本書紀』厩戸皇子像の再検討」(『立命館文学』677号、2022年)を、同「小川八幡神社大般若経の歴史的位置付け」(『小川八幡神社大般若経調査概報2019 ~2021』、東京大学史料編纂所研究成果報告書2021-13、2022年)を発表した。前者は、主に7・8世紀における「厩戸皇子」の位置付けを考察し、古代王権と仏教との関係に新たな視点から考察を加えた。後者は、仏教説話の社会的地盤である地域社会における仏教の普及を考える上で貴重な古経典の研究成果報告である。 分担研究者の毛利は「八世紀前半期の地方財政」(『古代日本の民族・国家・思想』塙書房、2021年)を発表した。古代地域社会における官衙財政の運用実態の一端を考察したものである。 分担研究者の駒井は「8・9世紀の天皇における仏教的国王観の受容と展開―天皇菩薩観を中心に―」(『日本史研究』714号、2022年)を発表した。平安前期における天皇を菩薩と捉える言説の歴史的変遷を検討した論考である。 また本年度は、科研研究会を1回、研究のための打ち合わせを2回開催した。研究会は、令和3年8月に行った。駒井が「8・9世紀の天皇における仏教的国王観の受容と展開」と題した報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第3年度目も、代表者・分担者いずれも共著書・学術雑誌等で研究成果を公表し、それぞれ数回の口頭報告を行うことができた。研究会も、1回だけであるが開催することができた。なお研究成果としては挙げていないが、代表者の勤務先の大学院ゼミには、分担者の毛利・駒井がそれぞれ数回ずつ参加し、研究に関わる打合せや議論をすることができた。このように研究課題に関わる成果は着実に蓄積できているものの、『三宝絵』を題材とした研究を共同でおこなう機会は設けることができず、『霊異記』の写本調査にも行くことができていない。『日本霊異記』下巻の刊行準備についても十分に進めることができなかった。古代寺院の合同の現地調査は2020年度(令和2年度)は1回行うことができたが、2021年度(令和3年度)は代表者・分担者の時間がどうしても合わず、計画するのみで実施できなかった。 遅れの原因としては、昨年度末以来の新型コロナウイルスの流行の影響が続いていること、またそれぞれの大学における業務が繁忙であり、定期的に研究会を行う余裕をもてなかったことがあげられる。次年度は最終年度となるので、これまでの成果をまとめる研究会の開催をおこなうことを主眼とし、それを論考として発表する。また新型コロナ流行の状況を注視しながら合同の現地調査を2回実施できるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度(令和4年度)は研究期間の最終年度となるため、研究計画に基づき、またこれまでの研究期間における成果の蓄積をふまえ総括的な研究を行う。 研究代表・分担者による研究会は、2回開催し、成果を報告・共有する。時期としては年度前半に1回、秋に1回を予定している。また代表・分担研究者それぞれの研究成果を積極的に論文化し公表する。 『日本霊異記』下巻または『三宝絵』に見える古代寺院の現地調査を2回行う。1回目は和歌山方面で5月29日計画している。この他、夏期に九州方面または四国方面において関係地・遺跡などを踏査する計画をしている。また『日本霊異記』下巻を検討し、注釈書の執筆を進める。そのため毛利・駒井で編集作業を進める。 次年度も本郷及び毛利が本務校の役職を継続しており多忙な状況下にあるが、最終年度にふさわしい成果を上げられるようにしたい。
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Causes of Carryover |
予定していた現地調査ができなかったため旅費の執行ができなかった。また代表者・分担者ともに学内の役職等で多忙のため、予定していた物品購入ができなかったことなどによる。2022年度(令和4年度)は、現地調査を2回行い適正に旅費を執行するようにしたい。また物品の購入等についても年度当初に行うようにしたい。
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Research Products
(11 results)