2023 Fiscal Year Research-status Report
平安期仏教説話の社会史思想史的考察-日本霊異記・三宝絵を中心に-
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19K00966
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本郷 真紹 立命館大学, 文学部, 教授 (70202306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 憲一 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (00425026)
駒井 匠 佛教大学, 歴史学部, 講師 (30794945)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 平安時代 / 奈良時代 / 王権 / 仏教 / 聖武天皇 / 孝謙天皇 / 古代説話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安期に成立した仏教説話集『三宝絵』『日本霊異記』の両書について、歴史学・仏教学的視座からの検討を行い、①9・10世紀の王権と仏教の関係、仏教思想受容の社会的実態を解明するとともに、②歴史学・仏教学的視点を重視した『日本霊異記』下巻の注釈書を刊行することを目的としている。 第5年度目となる2023年度は、次のような研究成果をあげることができた。 ①に関わり、研究代表者の本郷は、「奈良朝の官大寺-東大寺・西大寺と良弁・道鏡-」「王宮と王都の仏教」「聖武天皇と八幡神-天平勝宝六年十一月厭魅事件の意義-」を発表した。また「良弁僧正と弥勒菩薩」「八幡神と古代の王権」の2本の講演を行った。聖武天皇から称徳天皇朝期を中心として、当該期の仏教と国家・王権との関係を、官大寺である東大寺・西大寺と、両寺に関わった良弁・道鏡という僧侶の活動から論じたほか、豊後の宇佐八幡神と王権との関係についても、新たな事実の解明から光を当てた。「王宮と王都の仏教」は、年度内には未刊行であるが、古代宮都における仏教のあり方について概説した。分担研究者の駒井は①の課題に関わり、前年度に仏教史楽研究会大会での発表を成稿した「九世紀日本における攘災と天皇の「霊」」を発表した。一方、本年度は、研究会を1回開催したのみで、見学会などは行えなかった。 ②については、昨年度まで十分な作業ができなかったので、山本崇氏を研究協力者として迎え、『日本霊異記』下巻註釈書刊行の準備をすすめ、註釈書の上巻・中巻の刊行元である法藏館にて、下巻の執筆状況の把握・分担の振り直し等のための打合せを数回にわたり行った。 なお新型コロナの流行で十分な研究活動ができず、2022年度に当初の研究期間を延長することとなったが、今年度も代表者・分担者とも本務校多忙のため、更にもう1年の研究期間延長を申請せざるを得なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第5年度目も、代表者・分担者いずれも共著書・学術雑誌・学会等で研究成果を公表することができ、【研究実績の概要】①の課題については、代表者・分担者それぞれの立場で成果をあげることができている。一方で、代表者・分担者が本務校において引き続き役職に就くなど多忙を極めているため、研究会・見学会などを十分に開催できなかった。また課題②としている『日本霊異記』注釈書下巻の刊行については特に準備が遅れている。そこで新たに研究協力者を迎え、編集作業を少しでも進めることができたものの、原稿の執筆などまでは進められなかった。 なお昨年度、研究代表者の本郷が本務校の定年を迎えたため、その記念事業として、この科研に関わる成果を含む研究論文集『日本古代の国家・王権と宗教』を企画した。この論集は、研究代表者の本郷が監修し、山本・毛利が編者となって、本郷にゆかりのある研究者に呼びかけ、執筆を依頼したものであるが、その執筆・編集作業もあり、『日本霊異記』注釈書下巻の刊行準備を行う余裕がなかったことも、遅れの原因といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度(令和4年度)が本来の研究期間の最終年度であったが、研究期間中に新型コロナの流行があったため予定していた研究を十分に行うことができなかった。そこで研究期間を1年間延長したものの、『日本霊異記』下巻註釈書刊行の準備作業をこの科研の成果として少しでも進めておく必要があるため、さらに1年間の研究期間延長を行うこととした。 2024年度がいよいよ本当の最終年度ととなるため、研究代表・分担者による研究会を2回開催し、成果を報告・共有する。時期としては年度前半に1回、秋に1回を予定している。また『日本霊異記』下巻については、分担者の毛利が中心となって、研究協力者の山本とともに準備作業をすすめ、原稿の執筆作業を進めたい。
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Causes of Carryover |
2022年度(令和4年度)は研究期間の最終年度であったが、研究期間を1年間延長したが、代表者・分担者とも引き続き本務校多忙のため、2024年度までさらにもう1年の研究期間を延長することとなった。代表者と分担者について若干の研究費を残しているが、これについて、2024年度中の研究会開催のための諸費用、『日本霊異記』下巻の注釈書刊行にかかる準備作業、それぞれの研究者の成果発表のために使用する。
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Research Products
(9 results)