2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00969
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Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
渡部 浩二 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20373475)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近世産業 / 産業絵巻 / 鉱山絵巻 / 佐渡金銀山絵巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたり、近世産業絵巻群の中心のひとつである鉱山絵巻、とりわけ新たに発見された佐渡金銀山絵巻に関する補足調査を中心に行った。 新潟県立歴史博物館が新収蔵した『佐渡金銀山圖志』(全3冊)は、絵巻の形態や制作目的の変遷を考える上で示唆的であった。本史料は、採鉱から小判製造までの一連の作業工程が丁寧に描写される点で佐渡金銀山絵巻と同様であるが、当初から和綴本として制作されたものである。佐渡金銀山絵巻は、文政2年(1819)頃から和綴本に仕立てられるようになり、後には折本の形態となったとされるが、それを裏付けるものとして注目された。1冊目の巻頭と3冊目の巻末には、佐渡奉行所役人にして国学者・歌人の蔵田茂樹(1798~1853)による天保5年(1835)の序文、天保7年(1837)の跋文が加えられている。制作目的は明確でないが、絵画そのものは佐渡奉行所絵図師・3代山尾衛守(1790~1861)が手掛けたものと推察された。佐渡金銀山絵巻は、金銀産出量が激減していた1730年代頃に制作が開始され、その現状を記録・報告するのが当初の制作目的と推察されている。その後、佐渡奉行や組頭(奉行補佐役)の交代の度ごとに新技術の導入や経営体制の変化が反映されて幕末期まで100年以上にわたって描き継がれ、彼らが江戸に帰る際には佐渡土産となった。国学者・歌人でもあり佐渡文化についてまとめた著作もある蔵田茂樹の序文、跋文を持つ本史料からは、佐渡金銀山絵巻が当初の記録・報告的な性格をもつ史料から、しだいに佐渡の鉱山文化を江戸に伝えるような文化的側面が強い史料へと変容していったことが推察された。 また、明治時代に欧米の産業博覧会に出品されたと考えられる佐渡金銀山絵巻(個人蔵)の調査も実施した。日本の鉱業技術や鉱山文化を海外に示す手段として江戸時代の絵巻が有効で、海外の人々の関心を引いたことが推察された。
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