2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K00977
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
池田 勇太 山口大学, 人文学部, 准教授 (30647714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熊本実学党 / 長岡監物 / 荻昌国 / 小河一敏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熊本実学党という朱子学系の学党につき検討を行うことで、幕末維新期における政治と儒教との関係の一端を明らかにしようとしている。 2020年度は、予定していた出張調査が新型コロナ感染症のためできなくなったので、これまでに収集してきた史料の写真・複製を整理・解読する作業を進めた。まず、熊本実学党の代表的人物である長岡監物(熊本藩家老)の関係史料である「千日鑑」(熊本県立図書館所蔵「上妻文庫」)を読み進めた。これは長岡監物の家来である久野正頼の記録であり、ペリー来航前後の実学党の様子を窺うことのできる史料である。実学党が重視していた修身の修行が実際にどのように行われていたかを知ることができる内容であり、長岡監物の考え方や、彼らの学習方法に関する貴重な記述が多く見出せた。 また、東京大学文学部所蔵の「小河一敏文書」の解読を進めた。このなかには熊本実学党の荻昌国と荻蘇源太兄弟の書簡が収められており、現在残る数少ない両者の史料が見られる。この「小河一敏文書」は実学党がつながっていた志士のネットワークについても知ることができる史料であり、九州における志士の活動と熊本実学党の関係を考えるうえでも重要な史料であるといえる。 荻昌国については、その漢詩集「国風六十首」の写本が古書店で市販されていたため購入し、その解読も進めた。熊本県立図書館が所蔵する「上妻文庫」に残る写本と比較した結果、両書の原本が同じであることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は新型コロナ感染症の影響により、出張調査ができなかったため、当初予定していた佐賀・熊本・大分・福井での調査は一切できなかった。このため手持ちの史料写真・複製史料をもとに研究を進めたが、当初の予定に比して遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、前年度に引き続いて「小河一敏文書」の解読を進め、また下津家文書の整理を進める。また、購入した刊行史料を読み進める。感染症の状況が落ち着いて出張することが可能であれば、前年度の出張費をもとに出張調査を行う。特に佐賀県立図書館と玉名市立歴史博物館こころピアに行く予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナ感染症の流行のため、予定していた出張調査が全くできなかったため、旅費が残ってしまった。この次年度使用額は、2021年度の出張調査の旅費として利用する予定である。
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