2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00980
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
永田 英明 東北学院大学, 文学部, 教授 (20292188)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 郡家 / 城柵 / 墨書土器 / 正税帳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本古代の地方官衙の役割・機能を都鄙間交通との関わりという観点から再検討することを目的としており、そのための研究方法・計画として、(A)正倉院文書の正税帳をはじめとする律令公文類の再検討、(B)都鄙間交通に使用される文書の検討、(C)出土文字資料の情報収集・分析、(D)地方官衙遺跡及びその周辺地域の現地踏査による景観復原、という四つの柱を設定している。 初年度である2019年度は、このうちのB、Cを中心に作業に着手し、あわせてDの作業も行うという計画であった。実際には、まずCの作業については学生アルバイトを雇用し東北・関東地方を中心とした地方官衙での給食や交通にかかわる墨書土器・木簡のデータ収集、整理を進め、また関連学会にも参加し情報収集をおこなうなど、かなりの進展を得た。いっぽうBの作業については、平安時代の文例集や記録などの事例の収集に着手したが、情報収集作業はまだ途上で、次年度も情報収集作業を継続する予定である。またDについては、白石市馬場台遺跡(陸奥国篤借駅家候補地)岩沼市原遺跡(陸奥国玉前駅家・玉前関候補地)、大石田町駒籠楯跡(出羽国野後駅家候補地)など宮城・山形県内の関連遺跡の踏査を数多く実施できた。ただし年度末に予定していた山陰地方の現地踏査については、社会状況に鑑み中止を余儀なくされ、実施できなかった。 また、本研究に関連する研究成果として、古代三関の官衙としての性格について、政治史的視点から先行研究の再検討をおこい、その成果を2019年度東北史学会での口頭報告「固関再考」として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出土文字資料を中心とする文献資料の収集は、順調に進んではいるが、予想以上に作業量が有り、次年度以降もまだまだ作業が途上である。遺跡等の調査・情報収集も東北地方を中心にやはり順当に作業を進めている。ただし年度末近くに予定していた、交通関連地方官衙遺跡の現地調査については、新型コロナウィルスの感染拡大などの影響で実施することができず、次年度に持ち越しとなった。以上の点に鑑み、「やや遅れている」との評価に到った。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度の作業で情報を蓄積した(C)の出土文字資料の知見を基礎としつつ、(A)の正税帳記事の資料学的な検討に着手していく予定である。この課題については昨年度も新たに研究成果が発表されているので、その成果をも組み込みながら研究を進めたい。また昨年度作業途上に終わった(B)の課題については、今年度も、学生アルバイトの協力を得ながら継続課題として並行して進め、一定の見通しを得たい。(D)の課題については、関東地方の官衙遺跡の現地踏査にあわせて前年度実施できなかった計画も実施したい。前年度実施できなかった山陰地方の調査については、新型コロナウィルスに関する社会的状況なども考慮しながら、2021年度計画での対応を含め実施していきたい。
|
Causes of Carryover |
旅費に関しては、年度末に予定した交通関連遺跡の現地調査が新型コロナウィルス感染拡大に伴い実施できず残額が生じた。また物件費においては、人件費が若干予定をオーバーし、またその執行状況を勘案して一部執行を差し控えたことと、資料集の一部が調達できなかったため、残額が生じた。次年度以降においては、今年度未執行となった分も含め、若干の調整をおこないつつも原則として当初の予定通り費目を変更せず執行したいと考えている。
|
Research Products
(2 results)