2021 Fiscal Year Research-status Report
「国風文化」期における中国書籍の流入状況に関する研究
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19K00981
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
榎本 淳一 大正大学, 文学部, 教授 (80245646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国風文化 / 中国書籍(漢籍) / 日本国見在書目録 / 藤原頼長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績として主要なものは、以下の4つである。
1.『日本国見在書目録』の追記部分の検討を行い、平安中後期に輸入された書籍の蓋然性が高いと思われる徴証を得ることができた。この時期の中国書籍の流入状況を把握する上で有効な史料であることを確認できたことは大きいと考える。貴族の個別な日記からは伺い知ることのできない全体的な書籍情報と考える。追記部分の分析によれば、新しい漢籍というよりは、唐以前のものが多く、中国書籍の受容状況がどうであったかを考える材料になり得る。 2.院政期の中国書籍の受容状況を把握するため、左大臣藤原頼長が中国商人に書籍購入を依頼した「要書目録」の検討を行った。各種の書目を活用しながら、必要な書籍の選定を行っていたことがわかり、宋代の書籍についても宋代の書目に拠って選定していたことが想定される。また、新来の書籍だけを求めていたわけではなく、広く各時代の書籍を入手しようとしており、当時の学問状況を考える上でも重要な史料であることを再確認した。 3.『シリーズ古代史をひらく 国風文化』(岩波書店)の内容を再吟味し、その成果と問題点の抽出を行った。この検討を通じて、当該期の書籍流入状況に関する研究状況の把握ができた。また、今後の研究の方向性を探ることもできた。 4.継続して行っている平安時代貴族の日記における書籍情報のデータ入力・整理を行った。摂関期までの入力はほぼ終了し、現在院政期の日記の入力を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた史料調査を全く行うことができなかった。また、院生をアルバイトで雇用し、研究補助してもらうこともできず、書籍情報のデータ入力にも大きな支障が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長を行い、2021年度に実施できなかった史料調査や遅れているデータ入力を実施・推進したいと思う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた史料調査を実施できず、旅費を使用することができなかった。また、1年を通して院生を雇用して研究補助をしてもらう予定であったが、上記と同じ理由で、雇用できない時期が長期にわたって生じたため、予定よりも謝金の支出が少なくなった。 研究期間を延長することで、前年度実施できなかった出張とアルバイト雇用を行うことで、研究を推進し、予算を計画通り執行したいと考える。
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Research Products
(2 results)