2019 Fiscal Year Research-status Report
植民地統治下の台湾の「日常」と「帝国」日本-植民地統治の影響の深度に関する考察-
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19K00985
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
松田 京子 南山大学, 人文学部, 教授 (20283707)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 皇太子台湾行啓 / 政治儀礼 / 台湾先住民 / ライフヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「植民地の日常」の中に働く微細な権力作用や、植民地の日常生活の「場」におけるヘゲモニーのあり方について、特に植民地住民の階層性に注意を払いながら分析することを通じて、植民地統治が植民地社会および植民地住民に与えた影響の深度を考察するものである。 具体的には植民地統治下の台湾に着目し、本研究の初年度である2019年度は、1923年に行われた皇太子の台湾行啓という場面に着目し、①在台日本人、②漢民族系住民の名望家・知識人層、③台湾先住民エリート層が、このような大規模な政治儀礼に、どのような形で動員され、かかわっていくのかを、台湾総督府の編纂による『(台湾総督府版)台湾行啓記録』(国立台湾図書館所蔵)、宮内省御用掛国府種徳による『(宮内省版)台湾行啓記録』(宮内庁書陵部所蔵。なお中京大学社会科学研究所台湾史研究センター編『台湾行啓記録』2009年として翻刻・刊行されている)を中心に、「台湾総督府公文類纂」、「台湾総督府専売局公文類纂」の中の関係文書、および台湾で発行されていた日本語新聞「台湾日日新報」などの関連記事も含めて分析を進めた。さらにこのような政治儀礼の「場」での経験が、それぞれの「日常」にどのような形で影響を及ぼすかについて、考察を進めている。 また日本統治期に高等女学校で教育を受けた漢民族のある女性のライフヒストリーに着目し、そこから植民地台湾の日常生活について、特に公学校および高等女学校での「学校生活」、空襲の記憶や1945年8月15日の記憶など「戦争の記憶」を中心に分析し、さらにその経験が、日本による植民地統治が終わった後の、国民党政権下での台湾の日常生活と、どのように関連するのかについて考察を進め、その成果の一部について研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた1923年の皇太子台湾行啓と植民地台湾の「日常」の関連性について、特に台湾先住民に焦点をあてた研究発表を予定していた。具体的には2020年3月に台湾史研究会3月例会において研究発表を行い、そこでのコメントや議論を踏まえて、研究論文としてまとめ、公刊する計画で研究を進めていたが、新型コロナウイルス感染症の影響により台湾史研究会3月例会の開催が中止となり、予定していた研究発表ができなかった。 そこで2020年度の早期に関連学会・研究会等で研究発表が行える機会を探るとともに、上記のテーマについて論文執筆を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、昨年度の研究テーマとの連続性を重視し、当初の研究計画では2022年度に実施する予定であった研究テーマを先取りして、研究を進めていきたいと考えている。具体的には台湾先住民の中のエリート、特に植民地政府が設置した台湾先住民対象の初等教育機関「蕃童教育所」を卒業し、当時「先覚者」と呼ばれた青年層のエリートに焦点をあて、植民地政府と台湾先住民社会の間で揺れ動く彼らの「日常」を明らかにすることを通じて、植民地統治が台湾先住民エリートに与えた影響を、1910年~1930年代を中心に解明していく予定である。 ただし当時の台湾先住民社会の「日常」に迫ることができる資料はごく限られている。1920年代に関しては『理蕃誌稿』、1930年代に関しては『理蕃の友』が基本資料となるが、これらはすでに備品として備わっているため、その中から本研究課題に関連する重要記事を抽出し分析を進める。また台湾大学図書館(台湾・台北市)に調査に赴き、同館に所蔵されている当時の雑誌や台湾の地方新聞等の閲覧・調査を行い、関連資料の収集を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、現時点では台湾への渡航は困難であるため、状況の推移によっては、2020年度は国内での資料収集とその分析に特化して研究を進めることも考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年3月に研究発表を行う予定であった研究会の開催が中止となり、また国立国会図書館など国内の資料調査旅行についても、実施が困難となったため、当初予定していた使用計画と異なることとなり、旅費を中心に次年度使用額が生じた。 2020年度は、研究課題を進める上で不可欠な関連資料・関連図書の購入に使用するとともに、台湾への調査旅行、国内での資料調査旅行、学会での研究発表旅行のための旅費として主に使用する予定である。しかし万が一、新型コロナウイルス感染症の影響で台湾への調査旅行が、長期間、困難となった場合は、2021年度に購入予定であった関連資料・関連図書の購入を先だって進めることも考えている。
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Research Products
(1 results)