2023 Fiscal Year Research-status Report
寺院の文化財を撮影したガラス乾板写真資料の総合的・基礎的研究
Project/Area Number |
19K00988
|
Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
鷺森 浩幸 帝塚山大学, 文学部, 教授 (40441414)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 敦子 帝塚山大学, 文学部, 客員研究員 (50574042)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 奈良 / 文化財 / 写真 / 仏像 / 日本文化 / 日本古代史 / 観光 / 美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガラス乾板そのものに関わる研究に加えて、永野が活躍した戦後期の奈良の歴史や文化財、文化に関する動向を考察することが大きな柱の一つであるが、今年度はその領域の研究が主要な位置を占めた。この点で大きな意義を持つと思われる月刊紙『奈良県観光』(1956-1989年)記事のデータベースは研究代表者を中心して進められ、方法は以前と同じく、各号の個々の記事について、属性を調査し、入力することである。昨年度に公開にむけて、正確を期するための再確認の作業や種々の定型的な記述の統一などの作業を行う段階にあったが、本年度、主要な記事を集成した報告書『月刊紙『奈良県観光』記事集成(稿)』(本体190ページ)を制作した。そのなかで、永野太造に関する貴重な情報も得られた。また、1点1点の記事が当時の奈良の文化的な状況全体を示す情報であることが強く感じられた。この点はこれまでと同様である。また、その成果を利用して1960年代の奈良における食生活をテーマとした論考を発表した。永野太造が『奈良県観光』に提供し掲載された写真および、運営を担った吉祥会の活動に関する情報収集を行い、整理を進めた。この成果はこの成果は来年度予定の最終報告書に盛り込む予定である。 研究分担者はガラス乾板そのもののデータベース化を進めた。基本的な骨組みはおおむね完成し、さらに情報を付加し情報量の拡大に取り組む段階となった。また、永野太造に関する資料収集も進め、その整理が進行中であり、この成果は来年度予定の最終報告書に盛り込む予定である。 研究代表者はより大きく奈良(大和)の古代史全体を見通すべく研究を進め、その成果をもとに、一般向けの公開講座(帝塚山大学奈良学総合文化研究所主催 奈良学への招待22 「武内宿祢説話と大和・河内」)を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
永野鹿鳴荘ガラス乾板資料調査の本格的な情報化作業は基本的なデータの蓄積を踏まえて、データ・ベース構築についても成果があった。『奈良県観光』のデータベース化はデータの蓄積から本格的なデータベース化に進み、200ページ弱の報告書を作成することができた。そのなかで、永野の『奈良県観光』への貢献(おもに仏像などの写真の提供)や深い関係も有する吉祥会の活動について継続して情報収集を進め、最終報告書に掲載する見通しが立ってきた。戦後期の奈良の歴史や文化財、文化に関する動向を考察するという課題において大きな進展があり、奈良における活発な文化的活動を見通す基本的な情報整備が進んできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
永野鹿鳴荘ガラス乾板資料のデジタル・アーカイブとしての整備はさらに継続して行う。特にメタ・データの調査・報告をより充実させ、かつ完全な情報を集積するための事業を進めていく(研究代表者)。そのため、すでに蓄積している既刊の『永野鹿鳴荘ガラス乾板資料調査概報』の再確認などの成果を的確に発信していく必要がある。 すでに得られた月刊新聞『奈良県観光』の掲載記事の集成をもとに、概要に留まることなく、より多くの情報を収録した本格的なデータ・ベース化を進め、基本的な研究環境の整備を行う(研究代表者)。詳細なことと引き換えに、大きな情報量となるため、公開の方法は今後、検討する必要がある。さらに、記事に記録された当時のさまざまな状況と現状の比較などが興味深い研究テーマであるが、同時にそれは現在、それらがどのような状態にあるかをフィールドに即して記録することでもある。今後はこの点の研究の充実を図っていく。 以上の諸研究の成果をもとに最終的な研究報告書を作成する。ガラス乾板そのものに関する情報(ただし基礎的なメタ・データはデジタル・データの形式)や『奈良県観光』記事のデータベースなどがその内容となる予定であり、さらにフィールド・ワークの成果なども収録する予定である。また、来年度、葛城市歴史博物館でガラス乾板からのプリントを展示する企画が進行中であり、関係機関と協力のうえ、それを実施する。引き続き、永野鹿鳴荘ガラス乾板資料と帝塚山大学の提唱する「奈良学」研究、戦後の奈良の寺院(研究代表者)・永野太造の業績(研究分担者)などを主なテーマとして、公開講座など、研究成果の発信に努める。
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は不要不急の研究出張をひかえたこと、特にふさわしいものが出来せず、関連する歴史資料の購入が予定を下回ったこと、200ページ弱の個別的な報告書『月刊紙『奈良県観光』記事集成(稿)』制作を先行させ、全体的な最終報告書の作成を慎重に進めたこと、ガラス乾板からのプリントを博物館で展示する企画が出来し、そのための資金を残したことである。次年度において、特に質量ともに豊かな報告書作成を行うべく、作業を進めており、同時に研究の進展に有益な資料の購入や出張を実施する。また、博物館における充実した展示を実施する。
|
Research Products
(2 results)