2021 Fiscal Year Research-status Report
中世荘園における荘官の実務能力と環境対応に関する研究
Project/Area Number |
19K01003
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高木 徳郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00318734)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 林家文書 / 中世荘園 / 荘官 / 公文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により現地調査および原本調査にかなりの制約があったが、オンラインによるミーティングを綿密に行うなどして、ほぼ目標通りの成果を達成できた。 具体的には、紀伊国和太荘の公文(荘官)を務めた林氏の家に伝わった膨大な帳簿および文書史料(林家文書)の翻刻と原本確認作業を協力者とともに行うことで、一次的な翻刻作業については今年度中で完了することができた。これにより、従来、部分的な紹介(博物館展示での活用や個人の研究論文等で個別の数点の文書を引用する等)にとどまっていた林家文書の全体像をおおよそ把握する基礎ができあがったことになる。 但し、この段階では、個別の文書と文書を比較対照して整合的に理解したり、現状で分離してしまっている文書を接合したりの作業は行えておらず、また文字の読み誤り等もまだ潜在的にある状況であるため、全体を見渡した上での二次的な翻刻作業が必要である。今年度はこの二次的な翻刻作業に着手し、約4割の文書についてこの作業を終えることができた。 なお、林家文書の現在の所蔵者である和歌山市立博物館における原本調査をふまえた三次的な翻刻作業については、新型コロナウィルス感染症拡大のため、原本調査の機会を1回に抑えざるを得なかった。林家文書は、中世文書の中では最も正確な判読や理解が難しいとされる、年貢収納などに際して作成された帳簿史料が多数を占めているが、写真などによる判読ではなかなか正確な判読・理解が難しく、原本を熟覧しての翻刻が不可欠である。本年度は、現時点において必要最小限の原本確認を行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、新型コロナウィルス感染症拡大のため、本研究が当初の計画通りに進んでいるとは言えない状況ではあるが、それにしても最低限、中世和太荘の荘官を務めた林家二伝わる600点に及ぶ学界未紹介の中世文書の全体像を把握し、整理の上学界に紹介できる状態にすることを改めての目標とすると、現在は、6割程度の進捗状況と言える。残り1年度で何とか学界に紹介できる目途まではつけたいと思っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる2022年度については、まずは二次的な翻刻作業を継続し、これに何とか目途をつけたいと考えている。また、原本調査については、少人数による調査を最低1回程度できればと考えている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大により、現地調査および現在の所蔵者である和歌山市立博物館における原本調査が、予定通り実施できなかったため。
|