2022 Fiscal Year Research-status Report
Documents and Literacy in Pre-Modern South Asia: Through the Compilation of the Corpus of Early Medieval Inscriptions of Bengal
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19K01014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古井 龍介 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (60511483)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 南アジア / 中世 / ベンガル / 碑文 / 銅板文書 / シヴァ派 / 仏教 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度に引き続き撮影・取得済みの碑文・銅板文書の校訂・再校訂を進める一方で、諸国際会議にて報告し、あわせて博物館での所蔵品調査を行った。具体的には、ヨーロッパ研究評議会プロジェクトDHARMAにおける碑文データベース構築作業の一環として、パーラ朝銅板文書6点、同王朝期の石碑1点を再校訂の上XMLファイルとしてコード化し、またそれらを中心とする碑文史料を用いて口頭報告を行った。まずベルリン自由大学で開催された第34回ドイツ東洋学者会議のパネル「碑文記述における自己表象と他者表象」での報告では、カナウジを巡って争ったパーラ朝、グルジャラ・プラティハーラ朝、ラーシュトラクータ朝の碑文における抗争の描写を分析・比較して、そこから読みとれる自他表象の戦略および王権観の異同を論じた。次に、SHIVADHARMAプロジェクトによりナポリ東洋大学で開催されたワークショップ「中世初期東インドにおけるシヴァ派・仏教の遭遇」にオンラインで参加して報告を行い、碑文に見られる表象および活動から、パーラ朝諸王の宗教的帰属に、世俗権力の公的表明としてのブラーフマナとブラフマニズムの保護、王朝としての仏教保護、王個人としてのシヴァ派への帰依という複数の層位があることを論じた。また、東京大学で開催されたヴィハーラ・プロジェクト2022年度キックオフ・シンポジウムにおいて、仏教僧院と「世俗性」の問題に対する碑文史料の可能性と限界について論じた。 現地調査については、ベルリンのアジア美術博物館およびコペンハーゲンのデンマーク国立博物館の所蔵品を調査・撮影した。今年度のインド・バングラデシュでの調査は見送ったが、現地協力者を通して新出の石碑・銅板文書のデジタル写真を取得し、解読を進めた。以上に加えて、銅板文書に読み取られる中世初期北ベンガルでの農耕拡大についての論考を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はようやくヨーロッパでの研究報告・調査は実現したものの、インド・バングラデシュでの調査については、新型コロナウィルス感染症流行の状況について不確定要素があったため、延期した。現地協力者の協力もあって一部の新出資料を収集することができたものの、やはり現地での調査および資料収集が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、取得済み画像データをもとに、未公表碑文の解読・校訂および公表済み碑文の再校訂を行いつつ、同時に碑文データベース構築作業を一層進める。新出碑文のうち、解読の済んだものについては順次論文としての公表を目指す。また、インドでの現地調査を行い、新出碑文史料を撮影・調査する。
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Causes of Carryover |
ベルリンへの渡航費および滞在費がパネル主催者であるDHARMAプロジェクトの負担となり、また新型コロナウィルス感染症の流行状況を勘案してインド等での現地調査を延期したため、次年度使用額が生じた。次年度には新型コロナウィルス感染症流行の終息が見込まれるため、インドを中心とする現地調査のために旅費として主に支出するものとする。
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