2021 Fiscal Year Research-status Report
Land Registration during the KMT period: an institutional analysis
Project/Area Number |
19K01018
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田口 宏二朗 大阪大学, 人文学研究科, 教授 (50362637)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 中国 / 民国期 / 土地登記 / 制度 / 南京 / 土地制度 / 方法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本課題申請時に予定していた国内外での史料調査および研究交流事業をすべてキャンセルし、原稿執筆・オンラインでの研究報告に注力した。具体的実績の内容は以下のとおりである。 第1に、民国期都市不動産に対する制度分析を主たるテーマとする本課題において、方法論の構築は最も緊要な問題である。この点については、新型コロナ禍によりある程度まとまった時間ができたのを活用し、特に欧米圏における経済学・社会学の議論の系譜を辿る作業に費用と時間を傾注した。特に、インドの土地制度との比較を主題とした学会報告(日本語)を、インド史研究者と連名で行った。この報告については、さらに彫琢を経たうえで、2022年度、パリでの国際経済史学会での英語報告としてまとめなおす予定である。 第2に、民国期南京・上海での土地登記について、これまで中国語史料を中心に分析を進めてきた。本年は、すでに数百点以上集めてきた英国外務省文書(ロンドンのNational Archive所蔵)のなかにみられる関連史料のうち、1934年の和記洋行事件に関わるものを用い、法制史研究者たちによって発行された論集に日本語論考を掲載、公刊した。 第3に、第1で積み重ねた作業をもとに、英語の文章を執筆し、現在原稿の分量は10万ワードに達した(結論部分の直前に至っている)。この一部に関しては、本年度末、別科研によるワークショップで口頭報告を行った。原稿完成後、一定期間の推敲を経て、Routledge社からの刊行を目指している(編集者からは数年前より打診を受けている) 第4に、明・清代の農業と土地制度との関連を指摘した小文を、初学者向けの書籍のために執筆、本年度末に刊行された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄にて記した通り、今年度も新型コロナ流行により、台湾・中国大陸における档案史料の調査に赴くことは叶わなかった。したがって、実証研究の基礎となる、史料的収集面での進捗はさほど芳しくない(本年は、かつて収集した英語・中国語文書の分析にとどまった)。 他方、海外出張や各種研究会・ワークショップへの参加を見合わせた結果として、これまで腰を据えて読む時間がとれなかった(特に他分野の)研究文献を読むことができ、なおかつこれらを消化したうえで本課題と接合するために思索を重ねることができた点は特筆すべきである。当初旅費として計上していた予算の大半を、関連図書の購入のために支出したため、この部分の作業は予想以上の進展を見せた。 以上の作業の内容については、前欄にて言及した英語の原稿、および部分的にはインド史研究者との共同研究に反映されている(とりわけ、イタリアの経済学者・哲学者であるフランチェスコ・グアラの議論を発展的に取り込むことができたのは、大きな成果であった)。 なお、ビルマ史研究者ビクター・リーバーマンの提唱した「基準政体」による広域史の同調、という論点を導入した中国史の見直しについては、数年前に着手している。この作業も順調に進み、本年か来年にはRoutledge社より刊行される、リーバーマン記念論文集に収録される予定であることも付言しておく。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年は新型コロナによる渡航自粛の動きも徐々に弱まってゆくものと考えられる。本課題の最終年度として、7月末、パリでの国際経済史学会(WEHC)にて土地制度をめぐる研究報告を行い、8月にはロンドンのNational Archiveにおいて上海・南京の土地制度・土地登記に関するForeign Office文書を調査すべく、久々に海外渡航を行いたい。 また事情が許せば、8月から9月にかけての夏季休業期間に、台北の国史館・台湾大学図書館・国民党党史館、もしくは南京の第二歴史档案館・南京図書館での史料調査に従事することも予定している。 なお、本年度までの作業の成果については、前欄までに挙げた英語図書・論考以外にも、日本語での論考をいずれかの媒体で発表することも計画中である。
|
Causes of Carryover |
「研究実績の概要」欄で述べた通り、新型コロナウィルス流行の状況下、予定していた海外での研究活動をすべてキャンセルせざるをえなくなった。このため、旅費として予算計上していた部分、および現地での史料調査に必要な人件費を支出する計画については、ことごとく変更を余儀なくされた。 加えて、国内における学会発表もオンライン方式に切り替えられた。申請者が報告・参加したものでは京都・仙台・神戸にて開催されたものについては、延べ5回分の国内出張旅費も使用の要がなくなった。
|