2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of punishment in early modern China
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19K01032
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
徳永 洋介 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10293276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 亨 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (20712219)
中村 正人 金沢大学, 法学系, 教授 (60237427)
中村 覚 東京大学, 情報基盤センター, 助教 (80802743)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 配軍 / 充軍 / 廂軍 / 律 / 勅令格式 / 例 / 慶元条法事類 / 皇明条法事類纂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、宋代以降、死刑に次ぐ重刑がつねに軍制と密接な関係を有しながら推移した事実に焦点をあわせ、近世中国の法秩序の構造と特徴を明らかにすることにある。 その第二年目にあたる令和二年度は、第一に、宋代の刑罰体系のなかでも特異な位置を占める配軍の構造と特徴を明らかにするための基礎作業として、昨年度に引き続き『慶元条法事類』刑獄門の会読作業を行い、宋代の法と刑罰に関わる基本史料の整理と分析を進めた。但し、現下の情勢に鑑み、当該の会読作業はオンライン形式に切り替えて実施したが、準備に何かと手間取ったことから、残る三分の二にあたる巻74と巻75のうち、前者の巻74について、徳永があらかじめ訳稿を作成し、会読作業を通じて関連史料との校合と詳細な分析を行うかたちで検討を加える方式をとった。 第二に、明代の刑罰制度に関する基本史料の収集作業の一環として、これも昨年度に引き続き、『明実録』に収める充軍史料を重点的にあつめ作業を行い、『孝宗実録』と『武宗実録』の調査作業をおおむね終えることができた。なお、前年度も触れたとおり、『明実録』には充軍とは明確に断らなくとも、この刑罰に該当する記事も少なからず含まれることから、すでに調査済みの『太祖実録』から『憲宗実録』も含め、明代の法制用語をさらに帰納的に分類・整理できるよう、その土台作りに努めた。 第三に、宋代の配軍の受け皿となった廂軍のなりたちと性格について、研究史を洗い直すとともに、この組織がなぜ刑罰制度と密接不可分の関係をかたちづくっていったかを検証した。この結果、宋代には兵農分離が進んだ結果、兵士は妻子ともども兵籍に登録され、一般の編戸編民とは明確に区別された存在であり、配軍が民籍から兵籍への移管を伴う措置であることが改めて浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
とくに明代の刑罰制度については、研究の蓄積がきわめて少ない領域であること、また宋代の史料については、テキストの精確な校訂と分析作業に当初の想定以上の時間を費やしているため。また昨今の感染症の影響で、会読作業や史料調査に著しい遅滞が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり、『慶元条法事類』の精読と整理・分析、そして『明実録』に収載する刑法史料の調査・収集を進めるが、諸般の事情に鑑み、前者の研究・分析を重点的に行う。また現下の情勢では東洋文化研究所や国立公文書館などに収蔵する文献史料を実地調査できる余地がほとんどないことから、新たな史料の調査作業はひとまず差し控え、これまでに得られた成果をもとに法律文書の構造分析や法律用語の集成作業を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、今般の感染症の影響で出張旅費を使う機会が結局なかったことが大きく関係している。とくに文献史料の会読作業については、オンライン形式に切り替えて対応したものの、研究分担者のうち、高橋亨と中村覚は必要経費を他の科研費でまかなえたため、本来なら会読作業や資料調査に必要となるはずの旅費をそっくり繰り越すことになった。次年度繰り越し分は、今年度も研究集会の開催や文書資料館での調査が困難と判断されることから、主として史料購入費もしくは研究成果の整理に必要とされる経費として用いる。
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