2021 Fiscal Year Research-status Report
西夏王国の地方支配―西夏語文献に現れる経略使・監軍司の職掌の解明を中心に―
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19K01036
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
佐藤 貴保 盛岡大学, 文学部, 教授 (40403026)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 西夏 / 地方行政 / 監軍司 / カラホト / タングート / 出土文書 / 河西回廊 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本およびロシアにおける新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、2021年度に計画していたロシア科学アカデミー東方文献研究所でのカラホト出土西夏語文献の実見調査は実施できず、すでに公刊されている同文献の写真版を基に、西夏で制定された法令集のうち、監軍司や経略が関係する条文の解読を継続した。 研究代表者によるこれまでの研究によって、経略が監軍司よりも上級の官庁であって、経略と中央官庁との結びつきが強いことは明らかになっていたが、2021年度における研究の結果、監軍司が必ずしも経略に隷属しない事例があること、監軍司が中央政府と直接連絡を取ったり、監軍司・経略が地方に配置されている軍団とのつながりがあることが明らかになった。 カラホトから出土したその他の行政文書から経略や監軍司、地方官庁に関わるものを抽出し解読する作業も進めたが、文書の大半が断片であること、モノクロの写真版では押されている官印の寸法や印文がわからないこと、草書体で書かれているため解読が困難であるうえに、写真の画像が不鮮明であるために判読が難しいことから、新たな知見は得られなかった。 一方、法令集の条文で、「文書を送る」という意味の動詞の直前に置かれる動詞接頭辞は、上申文書か並行文書か下達文書かによって、異なる動詞接頭辞が用いられることを明らかにした。このことによって、断片しか残っておらず全体像が分からない行政文書でも、どの動詞接頭辞が用いられるかによって監軍司や経略がどのような部署と連絡を取っていたのかを知る手掛かりになり得る可能性が出てきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究期間の初年度から実施予定であったロシア科学アカデミー東方文献研究所でのカラホト出土西夏語文献の実見調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、2021年度も実施できず、調査のための渡航が未だ1度もできていない。 このため、すでに公刊されている出土文書の写真版から監軍司・経略に関連する行政文書を抽出し、解読を行うことを余儀なくされている。法令集の条文から監軍司と経略の役割の違いや監軍司が必ずしも経略には隷属しないことは明らかになったが、法令通りに実施されているかを検証するために解読の対象としている行政文書は、そのほとんどが断片であり、断片どうしが接合するか否かの判断は写真版ではできないため、地方支配における監軍司と経略の役割の実態を解明するには不充分である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、2022年度まで研究機関を延長することになったが、新型コロナウイルス感染症の終息が見通せないことに加え、2022年2月に始まったロシア軍のウクライナ侵攻が、ロシアにおける研究活動をさらに困難にさせている。感染症とロシアをめぐる国際情勢が好転した場合には2022年度後半にロシアでの文献調査を実施する。文献調査が困難な場合、写真版のみを使った文献調査をもとに、研究成果の取りまとめを行う。
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Causes of Carryover |
研究計画で予定していたロシア科学アカデミー東方文献研究所での西夏語文献実見調査が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により中止を余儀なくされ、計上していた旅費を使用しなかったため。
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Research Products
(1 results)