2022 Fiscal Year Research-status Report
西夏王国の地方支配―西夏語文献に現れる経略使・監軍司の職掌の解明を中心に―
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19K01036
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
佐藤 貴保 盛岡大学, 文学部, 教授 (40403026)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 西夏 / カラホト / 地方支配 / 経略 / 監軍司 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ロシア科学アカデミー東方文献研究所が所蔵する、西夏時代のカラホト遺跡(中華人民共和国内モンゴル自治区エチナ旗)から出土した行政文書、法令集のうち、西夏の地方支配に関連する機関とみられる経略と監軍司の記述がある文献を、同研究所に赴いて実見調査のうえ解読し、西夏の中央政府が地方をどのように統治しようとしていたのかを解明すること、西夏王国が皇帝を頂点とする中央集権的な国家であったのか、地方分権的な体制をとっていたのかを解明することを目的としている。 研究のよりどころとなるカラホト遺跡出土文書の実見調査は、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻により、ロシアへの渡航が困難になったため、新型コロナウイルス感染症感染拡大で渡航を中止した2021年度に続き、2022年度も実施できなかった。一方で、中国の研究者によって西夏の地方支配機関に関する新たな研究成果が発表され、その検証結果を踏まえたうえで、本研究の取りまとめを行う必要があると判断し、すでに公刊されているカラホト出土文書の写真版からの解読を試みるとともに、文書以外の資料からも西夏の地方支配の有り様にアプローチする方法での研究に着手した。 2022年度は、カラホト出土の西経略使が作成した行政文書の解読を行い、経略使が辺境付近で流刑に処せられている者の処遇に関与していることを確認した。また、文字以外の資料として、西夏の西部辺境地帯にあたる河西回廊(甘粛省西部)で西夏時代に新たに築造されたり、修復されたとされる仏教寺院遺跡の分布について、調査報告書や地形図等を用いて収集し、地域によってはオアシス都市から離れた山中にある寺院を修復したり、新造していることが明らかとなり、経略使や監軍司の支配がオアシスという「点」だけでなく、後背地にあたる山地にまで及ぶ「面」の支配が行われていた可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題で研究対象とする史料を実地調査する予定であった、ロシア科学アカデミー東方文研研究所への訪問が、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻で困難となり、渡航の見通しが立たない状況にあり、実地調査を実施できていないため。また、中国の研究者によって、西夏の地方支配に関する論考が発表され、その検証を踏まえた研究の取りまとめが必要なため。
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Strategy for Future Research Activity |
ロシアによるウクライナ侵攻は、終結の見通しが立たず、2023年度もロシアへの渡航が困難であることが予想される。このため本研究課題でのロシアでの調査は断念し、不十分ながら写真版からのカラホト出土行政文書・法令集の解読による経略・監軍司の職掌の分析、中国での実地調査に基づく寺院遺跡の分布から見た地方の「面」的な支配の可能性の解明を進めていく。
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Causes of Carryover |
ロシアへの調査渡航が見込めないため、当初予定した旅費を使用していない。残存している費用は、代替として2023年度に行う予定の中国での調査渡航の旅費、国内外の研究課題に関連する文献の購入費用、2023年度に研究課題を取りまとめる発表するための論文英訳に関連する謝金に使用する予定である。
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