2023 Fiscal Year Annual Research Report
西夏王国の地方支配―西夏語文献に現れる経略使・監軍司の職掌の解明を中心に―
Project/Area Number |
19K01036
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
佐藤 貴保 盛岡大学, 文学部, 教授 (40403026)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 西夏 / 地方行政 / 経略 / 監軍司 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画していたロシア連邦サンクト=ペテルブルク市のロシア科学アカデミー東方文献研究所での西夏語文献の実見調査は、ロシア軍によるウクライナ侵攻の影響で令和5年度も渡航ができなかったため、日本国内で入手できる文献資料をベースに研究を行った。あわせて、令和5年夏に中華人民共和国瓜州県・玉門市・張掖市の石窟寺院を訪れ、西夏時代に作成されたと考えられる供養人壁画や題記を実見調査し、西夏の地方支配が平地のオアシス地帯だけでなく、石窟寺院があるオアシス背後の山岳地帯にまで及んでおり、広域な地方支配を行っていたことが明らかになった。 これまでの文献資料や壁画資料を用いた研究によって、西夏は地方に置いていた監軍司と「経略」とよばれる官庁の職掌が具体的に明らかになった。すなわち、経略は近隣の複数の監軍司から中央政府へ出された軍官の人事に関する報告や問い合わせを取り次ぎ、それに対する中央政府からの指示を各地の監軍司に伝達しており、経略が中央と地方の監軍司とを結ぶ部署として機能していたことが判明した。地方は在地の有力者の一族を監軍司の幹部に採用して、地方分権的な支配形態であると認識されてきたが、本研究によって、西夏の地方支配が軍官の任用など軍事に関わる部分については、経略よばれる官庁を置いて中央政府が影響を及ぼしていたこと、ただしその長官である経略使は地方の官署にはおらず、中央官庁の幹部を兼任していて、平時は都にいた可能性が高いことから、中央政府の地方への介入は緩やかであったものと考えられる。
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