2020 Fiscal Year Research-status Report
Basic Research for Constructing a Cross- Mining History- With Special Reference to Information, Technologies and Engineers in British India and Neighboring Regions
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19K01037
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
杉本 浄 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (70536763)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 横断的鉱山史研究 / 鉱山技師データベース / 英領インド / 英領ビルマ / 英領マラヤ / イギリス帝国史 / コーラール・ゴールド・フィールド |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの感染拡大の中で、海外調査や発表がすべて中止となる制約があったが、今後の研究の見取り図が明確になったことは今年度の何よりの成果と言えるのかもしれない。 19世紀後半から20世紀初頭までの英領インドと諸藩王国、英領ビルマおよび英領マラヤにおける各種鉱山開発史の関連性に焦点を当てるのが本研究のテーマである。そのため、既存研究に見られるような、当該地域の各鉱山開発を個別に扱うのではなく、相互の関連性を前景化することで、その横断的な開発の全体像を明らかにすることを最終目的とする。 研究方法は、鉱山に関する当時の①「情報」、②「技術」、③「技師」に関するデータを収集し、分析することによって、相互の鉱山の関係性を明らかにするというものである。本年度の進展と実績を上記3項目に沿ってまとめると以下のようになる。 ①前年度より引き続き各種雑誌、新聞記事、ウエッブ公開された技術者データベースなど、多様なメディアから鉱山および技師に関する「情報」を集め、分析を行った。特に今年度は南インド・マイソール藩王国にあったコーラール・ゴールド・フィールズに関する資料分析を行った。その中で、イギリス帝国内の天然資源の現状と関連技術について話し合った「第1回帝国鉱山・冶金学会議」の資料にもあたった。②「技術」については、掘削ドリルと粉砕機の情報を集めた。データベースの構築は今後の課題であるが、機械関連の論文や企業広告などから年代ごと、地域ごとに技術的な進展とその広がりがわかるようにまとめていきたい。③引き続き、英字新聞の横断検索、技術者協会関連の雑誌の死亡記事と鉱山学校の同窓会名簿にあたり、データベース化された複数の技術者情報サイトからイギリス本国出身の技術者を選んで抽出し、一本化していく作業にあたった。 以上から、最終年度に向けて口頭発表と論文によって成果を順次公開していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大のため、本年度に延期されていた国際鉱山史会議(カナダ)は中止になった。そのため、審査を通っていた発表"Global Networks of British Mining Engineers from the Late 19th Century to the Early 20th Century-With Special Focus on Colonial India"がいまだにできていない。さらに、計画していた9月のイギリスでの文献調査、3月のインドでの文献調査も、事実上の渡航禁止のためすべて中止になった。こうして今年度計画していた海外発表や現地での文献収集については全く進展が見られなかったことになる。 それでも本研究は地道なデータ分析が柱であるため、すでに集まった資料を整理・分析することに多くの時間を割くことができた。口頭発表および調査が中止になった分、そうした時間ができたことになる。特に今年度より集中的に整理・分析を進めている植民地インドでの鉄鋼石鉱山と金鉱山開発に関するデータの蓄積があったことは、次年度の発表に繋がるものと考える。 また、海外調査1回分弱の予算をグローバル・ヒストリーやイギリス帝国史、さらに関連植民地の研究書を購入できたため、今後の研究や発表にも生かしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響がいまだ残るなかで、予定していた海外調査がこのままでは次年度も中止にせざるを得ない恐れは十分にある。今後は不足史料の洗い出しを行い、日本から画像データとして入手できるものを発注していく形で、その不足分を補っていきたい。残り1年の研究期間では、以下の3点に絞り込んで進めていきたい。 ①植民地インド、英領ビルマ、英領マラヤにおける鉱山技師統合データベースの完成。 ②口頭発表としては以下2つを予定。1)19世紀後半からインド独立(1947年)までの南インドのコーラール・ゴールド・フィールズの歩みを精査したうえで、関連した人々の様々な記憶と情動をテーマとする発表。2)1924年6月3日-6日にロンドンで開催された「第1回帝国鉱山・冶金学会議(The first Empire Mining and Metallurgical Congress)」と植民地インドの資源に関する発表。本会議の目的は①イギリス帝国の天然資源開発に関連する科学、技術、経済問題を扱う論文について議論し、②鉱山・冶金学の研究機関に帝国協議会を構築しようとすることにあった。いわば、それまで帝国内各地でバラバラに行われていた研究・開発に統一的なプラットフォームを設けたのがこの会議だった。第1回会議では、南アフリカ、オーストラリア、カナダ、インドなどの各種鉱山に関連する研究発表や鉱山技術や安全性に関わる発表があった。この会議を通じて見えてくる帝国の資源に対するまなざしについて考察したい。 ③論文の寄稿については、上記②の2番目の発表、帝国の資源へのまなざしを分析した論考を用意することを目的にしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大のため、前年度に発表が決まっていた国際鉱山史会議(カナダ)が今年度6月に延期から中止になった。さらに計画していた9月のイギリスでの文献調査、3月のインドでの文献調査も同じ理由ですべて中止なった。海外調査1回分弱は必要な参考文献の購入と多量のデジタル史料を効率的に処理できるデスクトップPCの購入に充てた。残額は次年度の海外調査で使用する予定であるが、一部は専門図書館からのデジタル史料の購入に使用することも考えている。
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