2019 Fiscal Year Research-status Report
出土史料と文物考古資料からみた古代チベット帝国の文書行政と国家体制の研究
Project/Area Number |
19K01043
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
岩尾 一史 龍谷大学, 文学部, 准教授 (90566655)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 吐蕃 / 古代チベット帝国 / 国家体制 / 行政文書 / 公文書 / 会計文書 / チベット |
Outline of Annual Research Achievements |
・本年度は研究基盤を固めるために、関連する資料を収集することに集中した。同時に、古代チベット帝国において使用された行政文書について、すでに収集した例をまとめたデータベースを作成した。今後は例を増やすとともに分類を行う予定である。また、古チベット語データベース(Old Tibetan Documents Online:https://otdo.aa-ken.jp/)のデータ整理とデータ増加の方法について、管理者メンバーと運営について集中的に相談を行った。 ・本年度は初年度にあたるため、学会発表等によってフィードバックを得ることに努めた。主たる研究成果は次の通りである:(1)4月18日『敦煌学会』(ケンブリッジ大学)にて、古チベット語敦煌文書P.t.1128をもとにして、古代チベット帝国の追加徴税について研究発表した。特に上記文書に繋がる断片が存在し佚文を回収できること、テキスト全体から追加徴税のプロセスが判明することについて報告した。(2)10月25日『旧紙弥新ー敦煌古蔵文文献学術研討会』(清華大学)にて敦煌の土地調査と調査のプロセスそして関連する公文書について研究発表した。(3)(4)その他、本研究における成果の一部を利用して7月8日に第15回国際チベット学会(INALCO)にて、また10月26日に『中日蔵学研究の現状』(中国蔵学研究中心)にて研究発表を行った。(5)さらに、本研究を遂行する上で判明した古代チベット帝国の国家構造について、多民族による構成と行政体制との関係を中心に概説した。(6)Institute of Oriental Manuscripts(ロシア・サンクトペテルブルク)所蔵の古チベット語文書断片の一部について、同所のAlexander Zorinとともに調査を行い、カタログを作成した(2021年度出版予定)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・本年度は、4年にわたる研究の初年度としては比較的多くの研究業績を挙げることができた。特に4月18日と10月25日の国際学会における研究発表では、古代チベット帝国で行われていた追加の徴税について、また古代チベット帝国の土地調査と調査のプロセスそして関連する公文書について現時点での研究結果を報告し、フロアから多くのフィードバックを得ることができた。特に前者については以前から知られていた関連文書につながる断片を発見することができたため、従来の見解を大きく進展させることができた。また土地調査とそのプロセスについても、従来の関連研究では使われなかった敦煌出土の漢語・チベット語文書を利用することによって、先行研究の成果を大きく修正することができた。今後は得られた意見を盛り込みつつ分析を進め、出版物として公表することを目指す。 ・本研究は古代チベット帝国の行政体制を、中央アジアから出土した古チベット語文書から分析することを目的とする。本年度はその基礎的作業として文書の簡易なデータベースを作成し、来年度以降の基盤を作ることができた。本データベースは、各文書の内容分析、文書の分類を進めるため、また行政手続きの解明についても研究の基盤となり得るものである。 ・本年度は国際学会での学会発表が多い一方で、校務との兼ね合いで文書の調査は行わなかった。来年度以降、必要に応じてオリジナル文書の調査を行う予定である。ただし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、柔軟に対応したい。 ・以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
・新型コロナウイルスの感染拡大により、本年度は外国での調査や学会参加が困難であることが予想される。代替策として資料購入の予定を早めるなど、研究計画のうち現時点で実現可能な部分を先に進行させて対処する。 ・上記のような一定程度の予定変更を考慮に入れつつ、来年度以降は既に出版された写真やオンラインデータベース(IDPやGallica等)を最大限に活用しつつ、行政文書のデータベースを充実させるとともに、使用例に基づき分類を行う予定である。また古代チベット語文書に現れる公印について収集を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)