2021 Fiscal Year Research-status Report
「フランク君主の勅令」としての「カピトゥラリア」概念形成過程の研究
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19K01047
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
津田 拓郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70568469)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カピトゥラリア / 勅令 / シャルルマーニュ / カール大帝 / 神話化 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目に当たるこの年には、それまでに得られた基盤に基づきつつ、カロリング後期~近世にかけての「カピトゥラリア」認識成立の過程をたどる作業を行い、その成果に関して2度の研究報告を行った。特に焦点を当てたのは、830年代に成立したとされる『法の書』であるが、『法の書』に収録されているテクスト群の後代における受容についても、可能な限り網羅的に調査することの必要性が浮き彫りになったため、さしあたり国内からも利用可能な画像データやマイクロフィルムを参照しながら、中世の写本の分析を進めている。従来、『法の書』はいわゆる部族法典とともに、「カピトゥラリア」を体系的に収録した作品であると考えられてきたが、実際のところ『法の書』が収録している「カピトゥラリア」とみなされてきたものには極めて多様なテクストが含まれている。本研究においては、『法の書』が成立した時点においてそれらがどのような形をしていたのかの復元を試みるとともに、『法の書』にまとまって収録されたことが、後代の「カピトゥラリア」イメージの形成にいかなる影響を与えたのかについても考察を行っている。この成果は今後外国語論文の形で公表される予定である。 なお、今年度も海外での資料収集・研究成果の報告は行う事が出来なかったが、オンライン技術を利用して海外の専門家をまえに研究報告を行うことが出来たのは大きな成果であるといえる。また、翌年における海外での計6ヶ月の研究滞在のための準備作業も順調に進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの流行拡大により、当初予定していた海外での資料収集・研究成果の報告は中止せざるを得なかったが、電子資料やオンラインメディアを活用することで、当初の予定を大きく変えることなく研究を遂行できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の予定通り、「カピトゥラリア」が「フランク君主の勅令」と(誤って)みなされていく過程の研究を行っていく。1~3年目には海外での調査が行えなかったが、4年目には計6ヶ月間ドイツに滞在して調査及び研究成果の発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行により海外渡航が行えなかったため残額が生じている。2022~2023年度に渡航費として使用することを計画している。また、オンライン研究会のための環境整備費や、写本データの取り寄せ費用としても使用する。
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