2023 Fiscal Year Annual Research Report
「フランク君主の勅令」としての「カピトゥラリア」概念形成過程の研究
Project/Area Number |
19K01047
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
津田 拓郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70568469)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カピトゥラリア / 勅令 / シャルルマーニュ / カール大帝 / 神話化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる本年においては、これまでの研究成果のとりまとめを行い、研究を完了させた。最終的な研究成果は、年度末に東京で行われた国際カンファレンスにおいて口頭報告の形で公表した。この内容は将来的に欧文の論文集に収録されることが決定している。当該報告においては、カロリング期の「カピトゥラリア」が中世を通じて忘れられていく過程、近世の人文主義者の手により「再発見」される過程、さらにはその際にcapitulariaという語が、カロリング期の用法とは異なる形で「君主の勅令」を意味するテクニカルタームとして定着していく過程を明らかにした。 また、4年目に執筆した、「カピトゥラリア」収集写本の一つである『法の書』に関する考察結果をまとめた論文を、ドイツの歴史ある雑誌に掲載した。ここでは、『法の書』における「カピトゥラリア収集」部分がそもそもは2部構成であったこと、全体を3部構成として提示する目次は本体部分の編者とは異なる人物によって付されたものであること、目次が与える印象とは対照的に『法の書』の本体部分は収録されたテクストのそもそもの姿を相当程度のこしていることを指摘した。これにより、『法の書』に収録されている「カピトゥラリア」が規定内容のみならず、その形式においても従来の想定以上に多様なものであったことが浮き彫りになり、こうした収集写本に基づいて類型概念を生み出してきた先行研究のあり方の問題点も明らかにされた。
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