2022 Fiscal Year Research-status Report
キリスト教ローマ皇帝理念と帝国経営の原理:9-10世紀ビザンツ皇帝と西方皇帝
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19K01052
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大月 康弘 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70223873)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 皇帝 / ローマ / ビザンツ / フランク / イタリア / 教皇 / 帝国 / コンスタンティノープル |
Outline of Annual Research Achievements |
9ー10世紀のヨーロッパ・キリスト教世界における「皇帝」称号をめぐる東西交渉に関する情報の整理・分析を継続した。2022年度もコロナ禍のため現地調査を断念した。その結果、以下の項目における史料分析に特化した。(1)西欧世界、特にイタリアから南フランスにかけての地域事情。(2)同地域がフランク王国、ビザンツ帝国双方に与えたインパクト。この観察枠組みのもと、(3)南フランスから北イタリア地域の権力者たちが、ローマ皇帝権とどう切り結ぼうとしたか。以上の観点を中心に作業を進めた。ローカルな歴史展開を追跡しながら、コンスタンティノープル(ビザンツ帝国宮廷)とアーヘン(フランク王国宮廷)の外交交渉のなかに、同地域の動静を定位することを試みた。その結果、オットー1世のイタリア遠征は、南フランス事情を含んで複雑な政治構造のなかで理解されなければならないことを認識した。西欧での政治事情、及び残された記録の粒度に対し、ビザンツ帝国関係者の反応が希薄であるのが際立った。史料所言の分析とともに、記述の粒度の差異についての考察を進めた。 なお、(4)リウトプランド『オットー史』Historia Ottonis のラテン語テキストについては日本語訳を完了しているものの、上記のような複雑な政治関係を反映させた注記の作成に手間取っている。テキストそのものにもクセが強く、潜在する政治的バイアスの検討にも時間が必要と認識された。他方、関連する諸テキストに見られる「ローマ皇帝」称号、および「ローマ」という一般的呼称の含意に関する検討は深まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
引き続き、史料テキストの分析に注力しながら、(1)リウトプランド『オットー史』Historia Ottonis のラテン語テキストの日本語訳に磨きをかけつつ、注記の充実化に努めたい。他方、(2)ギリシア語(ビザンツ側史料)とラテン語(フランク、ローマ教皇ほかイタリア諸勢力側の史料)での「皇帝」含意の比較考量を進め、「ローマ皇帝」理念、「ローマ」呼称の含意の抽出に努め、分析結果を取り纏める。
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Strategy for Future Research Activity |
できれば現地調査を行い、地理情報をも加味した成果発信を行いたい。南フランス・北イタリア地域事情の事実紹介を含む論文、また刊本の出版に向けた努力をしていくが、上記(1)のリウトプランド『オットー史』の日本語訳と解説は、できるだけ早い時期に公表したい。可能であれば、ヨーロッパ(フランスor/andギリシア)に出張を行い、資料収集を兼ねて現地の同学者との交流を設定したいものの、現在の勤務先での学務との調整が難しいかもしれない。いずれにせよ、適切かつ柔軟に対処できるよう研究を進める。関連史料テキストの分析を取りまとめ、論文および刊本での成果発信準備を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による研究調査渡航が困難だったため、次年度での延長使用を申請した。資料調査と海外研究者との交流による研究成果の洗練をめざして、当該研究費を活用したいと考えている。
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Research Products
(3 results)