2019 Fiscal Year Research-status Report
説教の作成過程の解明―中世末期イタリアにおける托鉢修道会間の知的交流
Project/Area Number |
19K01054
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
木村 容子 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (10636997)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 西洋史 / 中世史 / 説教 / イタリア / 托鉢修道会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が目指すのは、中世イタリアにおいて説教が作成される過程を、托鉢修道会間の知的交流に注目して明らかにすることである。研究計画に基づき、2019年度は、修道会間のネットワークと知的交流を考察する前提として、各修道会の特質を検討することに主眼を置いた。 第一に、ドミニコ会について、フィレンツェ国立中央図書館所蔵の写本に基づき、15~16世紀フィレンツェで活動したマルコ・ディ・ピエトロ・スッキエッリの事例研究を進めた。結果として、サヴォナローラと同時期に活動したスッキエッリが、ドミニコ会の知的伝統に依拠しながらも、同時代のフィレンツェでみられた人文主義的な知的傾向を摂取し、複数の説教スタイルを併用していたことが明らかとなった。その成果の一部を、7月2日に国際中世学会(リーズ大学)において報告した(「ドミニコ会士マルコ・ディ・ピエトロ・スッキエッリの説教集」)。学会滞在時には、ボローニャ大学のムッザレッリ教授と面会し、今後の研究計画に対する助言を受けた。 第二に、フランチェスコ会について、研究代表者が過去に収集した説教史料に加え、国内外の最新の先行研究を検討し、説教の作成過程の特徴を整理した。 第三に、9月にイタリアでの文献収集と史料調査を実施した。托鉢修道会間のネットワーク と知的交流を調査・分析するため、ピストイア市立図書館では、複数の修道会の説教が混在する写本をデジタルカメラで写真撮影し、分析作業を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画として、「3つの修道会について説教作成の特質を比較検討すること」を掲げた。ドミニコ会とフランチェスコ会については計画を実行できたが、アウグスティヌス隠修士会については十分な史料調査を行うことができなかった。他方で、次年度以降の計画である「托鉢修道会のネットワークと知的交流の調査・分析」について、初年度に前倒しして一部実現することができた。したがって全体としてみると、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、複数の修道会の説教が混在する写本に注目して、托鉢修道会間のネットワークと知的交流を調査・分析する。初年度に入手した写本データの分析を続行するとともに、新たにイタリアでの文献収集・史料調査(ナポリ国立図書館)を実施する。新型コロナウイルス感染症の状況次第では渡航が困難となるが、その場合には代替案を考え、目的の達成に努める。
|
Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は令和2年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)