2020 Fiscal Year Research-status Report
説教の作成過程の解明―中世末期イタリアにおける托鉢修道会間の知的交流
Project/Area Number |
19K01054
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
木村 容子 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (10636997)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 西洋史 / 中世史 / イタリア / 説教 / 托鉢修道会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が目指すのは、中世イタリアにおいて説教が作成される過程を、托鉢修道会間の知的交流に注目して明らかにすることである。研究計画に基づき、2020年度は、複数の修道会の説教が混在する写本に注目して、托鉢修道会間のネットワークと知的交流を調査・分析することに主眼を置いた。 第一に、複数の修道会の説教が混在した写本史料について収集・分析を進めた。事前の研究計画では、イタリアでの文献収集・史料調査(ナポリ国立図書館)を実施予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により当該図書館が閉鎖されたために渡航を中止した。現地での調査に代えて、イタリアとドイツの複数の図書館を対象に、郵送あるいはオンラインにて入手可能な写本史料の収集を実施した(ナポリ国立図書館、キール大学図書館ほか)。そして入手した史料のデジタル写真について、トランスクリプション(文字起こし)作業と内容分析を進めた。その結果、著名説教師の説教が修道会の枠を越えて、他の修道会に取り込まれてゆく実態の一端が浮かび上がってきた。 第二に、上記の研究成果の一部を、10月30日に、関西比較中世都市研究会(大阪市立大学文化交流センター)において報告した(「托鉢修道会の説教ネットワーク-中世末期ヨーロッパの説教混在写本を手掛かりに―」)。研究会では、西洋史のみならず東洋史と日本史の研究者たちとの意見交換を通して、自身の視野を広げて考察を深めることができた。 次年度は、ヨーロッパでの文献収集と史料調査を実施予定であるが、コロナ感染症の影響に応じて代替案も検討しつつ研究を進展させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究計画として、「複数の修道会の説教が混在する写本に注目して、托鉢修道会間のネットワークと知的交流を調査・分析すること」を掲げた。コロナ感染症の影響によりイタリアでの史料調査・収集は中止したが、代替案として郵送やオンラインでの史料収集を実施して研究を進展させることができた。その結果、そうした研究成果を国内の研究会で発表することができた。他方で、2020年度に研究成果を論文として発表することができなかったという点で、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究計画に沿って、複数の修道会の説教が混在する写本に注目して、托鉢修道会間のネットワークと知的交流の調査・分析を継続する。これまでに入手した写本データの分析を続行するとともに、新たにヨーロッパの図書館での文献収集・史料調査を実施する。新型コロナウイルス感染症の状況次第では渡航が困難となるが、その場合には代替案を考え、目的の達成に努める。
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Causes of Carryover |
・当初計画では、令和二年度に海外出張を実施予定であったが、コロナ感染症の影響により史料調査実施予定であった図書館が閉鎖されたために、令和3年度に実施することとしたため、次年度使用額が生じた。 ・次年度使用額は、令和3年度請求額と合わせて外国旅費として使用する。
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Research Products
(1 results)