2020 Fiscal Year Research-status Report
In which sense was the Russian Empire an autocratic state?
Project/Area Number |
19K01056
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉田 浩 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (70250397)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 帝政ロシア / 農奴解放 / アレクサンドル2世 / ロシア経済史 / ロシア政治史 / 大改革 / 専制 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア皇帝がいかなる意味で専制君主であったかというテーマに対し、1.本年度は昨年度にロシアで収集した資料を分析すると共に、2.その一部を用いてアレクサンドル2世治世初期における財政政策の変化とその後におこなわれた「大改革」との関係について論文を発表した。 1 昨年度はロシア国立歴史文書館で皇帝の執務室兼居所である冬宮の守衛記録を1856年1月から3月まで収集した。今年度は同資料を用いて皇帝が誰と頻繁に面会し、「農奴解放をおこなうとしたら、下からではなく上からの方が良い」という言葉を含むモスクワ貴族代表の前で1856年3月30日におこなわれた演説は、事前に誰と相談して原稿が作成されたのかについての準備考察をおこなった。1855年に即位したアレクサンドル2世はこの時点では基本的に前帝ニコライ1世時代の高齢の大臣を留任させており、当該期間の面会も彼らが中心であったことから、同演説は従来の政策の延長線上にあるものと推測される。ただしこの問題の解決には冬宮以外での皇帝面会記録が記載されている「侍従日誌」の検討が必要であり、本年度に同資料を収集する予定であったがコロナのためそれが不可能となったため、結論は保留となる。 2 クリミア戦争後の財政金融政策の転換についてそのプロセスとメカニズムを分析することで、財政金融政策の変化が農奴解放に関する政策に大きな影響を与えたことを実証し、クリミア戦争の敗北が農奴解放開始の原因であると考える論者は、農奴解放を大改革の開始と誤解していることからそのような論に至るのであり、誤りであることを論文で主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度におこなう予定であったロシアでの資料収集が不可能となったためである。具体的には皇帝アレクサンドル2世がモスクワ貴族代表の前で1856年3月30日におこなった演説の評価をするため、既に収集した冬宮(皇居)守衛日誌に加えて冬宮以外での皇帝の面会記録である「侍従日誌」を収集する予定であり、さらに市制改革(1870年)、農民司政官改革(1889年)の分析のためにロシア国立歴史文書館で国家評議会、内務省ゼムストヴォ部、宮内省資料を収集する予定であったが、全て断念せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況は遅れているが、計画内容を変更せずに遂行する予定である。予定していた資料収集は本研究に不可欠であるため、出張のための旅費予算を残しておき、海外渡航が可能になった段階で速やかにおこなう。それまでの間には、公刊資料や既存の研究に基づいて農奴解放、市制改革、農民司政官改革についての分析をおこない、アルヒーフ資料を使用しなくても従来の研究史を修正することが可能な分野について論文にまとめて発表する。
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Causes of Carryover |
本研究ではロシアでの資料収集のための海外出張経費が予算の大部分を占めるが、コロナのため出張が全面的に不可能になったり、書籍の到着が遅れたりしたために次年度予算が生じた。予定していた資料収集は本研究に不可欠であるため海外出張経費は執行が可能になるまで使用せず、可能になった段階で速やかに執行する。
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