2021 Fiscal Year Annual Research Report
In which sense was the Russian Empire an autocratic state?
Project/Area Number |
19K01056
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉田 浩 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (70250397)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 帝政ロシア / 農奴解放 / アレクサンドル2世 / ロシア経済史 / ロシア政治史 / 大改革 / 専制 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア帝国がいかなる意味で専制国家であったかについて主にアレクサンドル2世治世について考察した。彼の時代は農奴解放、司法改革、地方自治制度の導入、財政改革、検閲改革など、農奴制的パターナリスティックな支配からリベラリズムを基調とした市民社会形成への移行が問われる改革が次々とおこなわれ「大改革」時代と呼ばれた。これらの改革遂行の際にイニシアティヴを皇帝がとったのか、あるいは信頼する側近や官僚に任せ自らは承認する立場にとどまったのかについて歴史具体的に明らかにすることが本研究の課題であった。 最終年度には大改革期に重要な役割を果たしたとされるコンスタンティン大公や彼の側近であるゴロヴニン、レイテルンなどとアレクサンドル2世の関係について、農奴解放、財政改革および教育改革の一部について公刊資料や初年度に入手した文書館資料に基づき検討を加えた。 研究期間全体を通じて明らかにした成果は以下のとおりである。1. 農奴解放における皇帝のイニシアティヴは条件つきではあるが明らかである。つまり皇帝自身は自らのアイディアを必ずしも有していなかったので基本的には委員会に委ね、貴族への説得や土地なし解放案から土地付き解放案への変更など重要な節目においてイニシアティヴを発揮した。他方、もともと農奴解放の実施に積極的ではなかった弟宮コンステンティン大公を説得し事業に参加させ、委員会で重要な役割を果たさせた。2. 従来の学説ではクリミア戦争での敗北が農奴解放のきっかけの一つとされたが、実際にはクリミア戦争後の経済政策の失敗と財政金融政策の変化が農奴解放政策に大きな影響を与えた。なお、経済改革について皇帝は人事を除き専門家に任せた。 以上のことから、ロシア皇帝は実質的な専制権力を有しており、大臣など政府高官の人事においてそれは最もよく発動され政治の方向を規定したが、個々の政策については専門家に任せていた。
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