2019 Fiscal Year Research-status Report
フランス絶対王政期の国王裁判と警察:マレショーセによる治安維持活動と民衆
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19K01059
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
正本 忍 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (60238897)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランス / 絶対王政 / 裁判 / 警察 / マレショーセ / 治安 / 民衆 / ノルマンディ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、マレショーセに関する法令類と現地の古文書館で収集した『マレショーセの職務に関する訓令』から、警察および裁判所としてのマレショーセの職務内容、管轄等に関する情報を収集した。その成果の一部は「史料紹介 フランス王国のマレショーセの規律、指揮命令系統および職務に関する王令(1760年4月19日)(2)」(『多文化社会研究』第6号、2020年3月)として公表した。また、マレショーセの裁判管轄について最終的に規定した1731年2月の国王宣言に関しても、その訳出をほぼ終了した。注釈を付した上で、来年度中に公表の予定である。 現地(フランス)の古文書館における史料調査は8月末から9月初旬にかけて行った。また、この渡欧の折、イギリス・ケンブリッジ大学で開催された研究会において、「売官制からみたマレショーセ "Marechaussee from the Viewpoint of the Venal Offices"」と題する報告を行った。 本研究テーマに関連して、フランス絶対王政の研究史をまとめているR. デシモン&F. コッサンディによる『フランス絶対王政 Absolutisme en France』の共同翻訳作業に参加し、この作業で得られた知見に関しては、絶対王政研究会(11月、長崎)で報告した。また、一般書ながら『フランスを知る50章』(明石書店刊)の執筆に参加し、ルイ14世治世期のフランスに関連する「親政」、「統治構造」の2つの章を担当した。これらの作業により、フランス絶対王政期の統治構造をより広い視野から検討する機会を得た。なお、上述の2書は令和2年度中に出版の予定である。 その他、九州西洋史学会において(11月、於福岡大学)、「マレショーセ研究の射程と課題」と題する研究報告を行い、マレショーセ研究の課題や本研究テーマの方向性について再検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度に予定していた研究計画の中では、マレショーセ関連の法令類と『マレショーセの職務に関する訓令』から、警察および裁判所としてのマレショーセの職務内容、管轄等に関する情報を抽出することは、ある程度できた。しかし、8月末から9月初めにかけてフランスの古文書館で行う予定であった史料収集には十分な時間を割けず、結果としてマレショーセの裁判文書の読解からマレショーセの騎馬警察隊としての活動を抽出する作業は、予定通りには進まなかった。 ただし、このような研究計画の遅れは、第一に、科研費申請当時、予定していなかったケンブリッジ大学における研究会報告、2019年11月の九州西洋史学会での報告が入ったためであり、このいずれもマレショーセに関連するものである。また、絶対王政研究に関する二つの仕事(フランス史に関する啓蒙書の二つの章の執筆と『フランス絶対王政』の共訳)が入り、そこにある程度の時間を割かなければならなかったためでもある。これらはいずれも、本研究により広い視野を与える機会だったとして、肯定的にとらえている。 第二に、研究代表者が長崎大学を退職し東京の大学に転勤することになったことである。これにより、11~3月はかなりの時間をとられることになった。 令和2年度は上述の第二が解消されるので、令和元年度の遅れを取り戻すよう努力する。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ・ウィルスのパンデミーにより、夏に予定していたフランスでの史料収集はおそらく難しいであろう。渡仏しての史料調査は来年の2~3月に延期せざるを得ず、したがって、これまでに収集できた史料(マレショーセの裁判文書)の分析を進めることになる。令和元年度に思うように進められなかったマレショーセの騎馬警察としての活動を抽出・分析することを優先的に行いながら、通常は同じ史料に現れるマレショーセの裁判所活動に関しても、事例を抽出・分析していく。令和2年夏予定していた海外史料調査の期間をそのまま、上述の史料読解作業に費やすことにする。 具体的な方法としては、均質の史料が入手できた年代を早急に選定し、その年代の裁判文書を集中的に読解する。その上で、①マレショーセが摘発した事件の訴訟手続を史料に基づいて再構築する、②その訴訟手続が王令の規定通りの実施されているか否かを確認する、③その訴訟手続において、マレショーセの騎馬警察隊員、将校、裁判役人それぞれが果たした役割を明らかにする、④マレショーセが裁いた事件の内容と刑罰を可能であれば数量的に分析する、などの作業を進める計画である。 なお、職場が変わったため、これまで校費で購入してきたフランス近世史、西洋法制史関係の書籍が手許になくなった。本研究に必要な参考文献を改めて購入することも少しずつ進めていかなければならない。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、第一に、校務が当初の想定以上に忙しく、予定していた期間の海外出張ができなかったことによる。第二に、年度末で退職・転職することになり、また新型コロナ・ウィルスが感染拡大したため、12月~3月の国内出張ができなかったこと、および参考文献の購入を控えたことが原因である。 次年度使用額は物品費(参考文献購入)に当てる予定である。
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Remarks |
令和元年8月26日にイギリス・ケンブリッジ大学で開催された研究会において、「売官制からみたマレショーセ "Marechaussee from the Viewpoint of the Venal Offices"」と題する研究報告を行った。
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