2020 Fiscal Year Research-status Report
フランス絶対王政期の国王裁判と警察:マレショーセによる治安維持活動と民衆
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19K01059
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
正本 忍 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (60238897)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マレショーセ / フランス / 絶対王政 / 訴訟手続 / アンシアン・レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、COVID-19のパンデミックにより予定していた海外史料調査が全くできず、新たな史料の探索・補充ができなかった。また、同じくCOVID-19の感染拡大により数ヶ月出勤停止が続いたこと、新しい職場に移ったこと等により、手持ちの史料、文献が限定的にしか使えず、さらに、1年を通じてオンラインの講義への対応におわれたこともあって、予定通りには研究を進められなかった。 そのような状況にあって、マレショーセの裁判部門の活動を解明すべく手許にある裁判史料を読み進めていたが、マレショーセの裁判管轄、訴訟手続に関する法令の理解にまだ足りない部分があると感じ、これらを理解をさらに充実させるため、1670年の「刑事王令」のマレショーセ関連箇所、およびマレショーセの裁判権、訴訟手続を最終的に確定した1731年2月の国王宣言の全訳を試みた。現時点で仮訳を終え、令和3年度内に公表する予定である。その他、本研究テーマに関する自分自身のこれまでの研究をふりかえり、「マレショーセ研究の課題補遺 ――3氏のコメントをうけて」(『西洋史学論集』第58号、2021年)を公表した。 マレショーセはフランス絶対王政の統治機構の一部を為すが、そのフランス絶対王政に関して、『フランスを知る50章』(明石書店、2020年刊)の第21章「ルイ14世の親政」と第22章「絶対王政の統治構造」を執筆した。また、フランス絶対王政の研究史に関するR. デシモン・F. コッサンディ著『フランス絶対主義』(岩波書店、2021年刊)の共同翻訳に参加し、第2部第2章「絶対主義の手段 ――国家装置の構築と集権化」を担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、フランスの少なくとも2つの古文書館、日程が許せば3つの古文書館での史料の調査および収集を計画していたが、COVID-19のパンデミックのため、全く渡航できなかった。私が収集し参照する史料のほとんどは手稿史料でインターネット上で公開されていないため、新たな史料の探索・補充ができなかった。 また、同じくCOVID-19の感染拡大により4月からの数ヶ月間、出勤停止が続いたこと、その後も感染を用心して出勤を最小限に留めたこと、諸事情により新たな職場の研究室で十分な研究体制(特に文献の整理)を整えられなかったこと等により、これまで収集してきた史料のコピー、同時代文献、参考文献をほとんど参照できなかっため、研究の細部を詰められなかった。 さらに、新しい職場での講義の準備、特にオンラインの講義への対応に1年を通じておわれたこともあって、予定していたようには研究を進められなかった。 令和3年度には個人研究室の環境をより改善できると思われるので、令和2年度の遅れを取り戻すようにいっそう努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
フランスおよび日本における現時点でのCOVID-19の感染状況を見れば、今夏に予定しているフランスでの史料収集はおそらく難しいであろう。職場の状況を考えると来年2~3月に渡仏調査をすることは容易ではないが、その可能性も考えざるを得ない。あるいは当該研究の1年の延長申請も視野に入れている。いずれにしても、日本国内の感染状況・ワクチン接種状況とフランスの感染状況次第である。 前述のように、昨年度、マレショーセの裁判文書を読み進める中でマレショーセの裁判管轄、訴訟手続についてまだ理解が足りない部分があることが判明したため、今年度はまず、「刑事王令」中のマレショーセに最も関連する箇所および1731年2月の国王宣言の翻訳を完成させ、公刊する。 同時に、昨年、思うように作業が進まなかったマレショーセの裁判文書の分析を、①マレショーセが摘発した事件の訴訟手続を史料に基づいて再構築する、②訴訟手続が王令の規定通りの実施されているか否かを確認する、③訴訟手続において、マレショーセの騎馬警察隊員、将校、裁判役人それぞれが果たした役割を明らかにすることにより進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、第一に、COVID-19のパンデミックにより予定していた海外史料調査および国内出張が全くできなかったこと、第二に、COVID-19の感染拡大に伴う出勤停止など諸事情により研究室が稼働せず参考文献の購入を控えたことによる。 次年度に繰り越す金額は、主に出張旅費(国内および状況が許せば国外)に当てる予定である。
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