2023 Fiscal Year Annual Research Report
フランス絶対王政期の国王裁判と警察:マレショーセによる治安維持活動と民衆
Project/Area Number |
19K01059
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
正本 忍 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (60238897)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス / 絶対王政 / 裁判 / 警察 / マレショーセ / 治安 / 民衆 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初設定した課題は、マレショーセの警察部門の活動の実態解明(課題1)、マレショーセの裁判部門の活動の実態解明(課題2)、マレショーセの活動に対する民衆の対応の解明(課題3)であった。COVID-19のパンデミックにより延長期間を含め3年間にわたって渡仏できず、現地古文書館の閲覧条件の変更、渡航費高騰、現地での物価高(円安)などによって新たな史料収集(特にマレショーセの裁判文書)とその分析は想定通りには行えなかった。 課題1では、史料「マレショーセの職務に関する訓令」を読み、先行諸研究からの情報と合わせ、規定された職務内容をおおよそ把握できた。だが、警察活動の実態を史料において質量とも十分に確認するには至らなかった。 課題2では第1の作業として王令等の分析による裁判管轄の再確認と訴訟手続の再構成を設定し、1670年の「刑事王令」中のマレショーセ関連条文とマレショーセの職務に関する1760年の王令を史料紹介の形で訳出・注釈して(2019~2023年)、課題1および2に関連する法的な枠組みを部分的ながらも明らかにした。また、第2の作業、マレショーセの裁判活動の実態解明については、後述の論考でその成果の一部に言及したものの、やはり史料による確認が不十分で、1本の論考としてはまとめられなかった。 課題3では当初、マレショーセに対する地域住民の、積極的あるいは消極的な協力と抵抗の分析を考えていたが、裁判外紛争処理と「司法利用」の観点から問題設定を組み直し、主として手持ちの史料の分析に基いて、論考「マレショーセの裁判文書に見る裁判外の事件処理と「司法利用」:予備的考察」(『西洋史学論集』、2024年)を公表した。
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