2021 Fiscal Year Research-status Report
ホロコーストの経験・記憶がアメリカ・ユダヤ人の公民権運動への参加に与える影響
Project/Area Number |
19K01060
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
北 美幸 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (80347674)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アメリカ史 / 公民権運動 / ユダヤ人 / ホロコースト / 西洋史 / 人種・エスニシティ / アフリカ系アメリカ人 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年~29年度(2015~2017年度、2018年度まで延長)基盤(C)および国際共同研究強化により、アメリカ合衆国で1950~1960年代に展開された公民権運動に、白人ボランティアとして多数のユダヤ人の若者が献身的に参加していた事実が確認できた。ただし、同研究では同時に、参加者のユダヤ人は極めて信仰心が薄く世俗的である、すなわちユダヤ人としての意識が希薄であることが明らかになり、研究目的のひとつである「アメリカ・ユダヤ人の『社会的正義』の追求、ユダヤ人としての自己認識」については十分に明確化ができなかった。 そこで本研究では、今日、ユダヤ系アメリカ人のアイデンティティの核が「ユダヤ教の信奉」ではなく「ホロコーストの記憶・経験」であることに着目し、本人や親族がホロコーストを経験していたり、ナチス政権下のドイツに居住経験があったりという人物や組織に焦点をあて、文書館所蔵史料の分析および聞き取り調査を行いたいと考えた。これらの作業により、①参加したユダヤ人内部の多様性を描くとともに、②人口比を大幅に凌駕するユダヤ人が公民権運動に参加した理由と動機としてのホロコーストの位置づけについて、従来の見解に対する見直しを提起したい と考えている。 2021年度は、2020年度に翻訳出版した、ホロコーストサバイバーであるマリオン・イングラム氏の回想録を手がかりに、サバイバーの正義感、特に黒人差別を傍観すること対する意識をより深く考察し、活字化した。また、イングラム氏のオンライン講演会およびオンライン会議システムや電子メールでの交信によりインタビュー調査をおこなった。また、後藤正英先生の科研費(基盤C 20K00101)と共催で研究会を開催し、ユダヤ「女性」という観点から、イングラム氏の行動について考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大および勤務先大学の海外渡航禁止の方針のため、現地での資料収集をキャンセルせざるを得なかった。2022年2月に部分的に禁止から制限に変更されたため、2022年度には、感染拡大および日本、アメリカ合衆国の水際対策次第ではあるが、資料収集も再開できる見込みである。ただ、いずれにせよ、収集した資料や国内所蔵の資料の分析、オンライン会議システムや電子メールでの交信による取材をおこなうことを前提に、今後も研究を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度と同様、ひとまず、これまでに収集できた史料の資料の読み込み・分析を進めるとともに、文書館の再開の可能性をフォローしておく。2022年2月、勤務先大学の海外渡航禁止の方針が緩和されたため、今後は感染の程度およびアメリカ合衆国、日本の水際対策次第で、渡航しての資料収集も可能になると思われる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により勤務先大学により海外渡航が禁止されており、資料収集のための海外出張が叶わなかった。現在では、学長の許可を得て、対面のみでおこなわれる学会および海外でしかおこなえない研究(文書館での資料収集も含む)のための海外渡航が可能になった(実際、2022年4月に米国リッチモンドでのヴァージニア歴史協会にて発表をおこなった。)資料収集先の文書館も閉鎖されていたが、現在は再開されており、今後は、いまだ制約があるものの、資料収集のための渡航も可能であると思われる。
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