2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on idea and institutions of representation in Meidieval Europe: A case of the papacy
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19K01062
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
藤崎 衛 上智大学, 文学部, 准教授 (50503869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 代理 / 代表 / 中世 / 教皇権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年1月、ドイツのヴッパータール大学ヨッヘン・ヨーレント教授のオンラインでの中世史ゼミナールに招かれ、「教皇庁とカン―イルハン・アバカへのフランシスコ会宣教団」と題する研究報告を行い、教皇によって派遣された宣教使節団の意義について教員や学生と議論を行った。教皇の書簡を携え、教皇に代わって外交的な交渉と宣教を行うという点で、宣教団の「教皇の代理」としての側面とその具体的活動を明らかにした。3月には西洋中世史の研究会(REN研究会)において、「公会議主義と地域教会―D.S.Petersonの研究紹介による―」と題し、15世紀初頭のフィレンツェにおける共和政や団体理論を公会議主義を関連付けるD・S・ピーターソンをはじめとする先行研究を紹介したうえで批判的に検討し、参加者との議論を行った。これにより、中世後期においては、誰が信者の意思を代表するかというのが公会議主義とそれに関連する当時の様々な議論の中心テーマの一つであったことが明らかとなった。この発表では、公会議主義を検討することにより、教皇に関わる代理や代表についての理論的変遷や洗練を追跡することができ、次年度以降の研究の足掛かりとなった。このほか、教皇の代理人として各地に派遣された教皇使節に関する論考をまとめ、次年度に公表する準備を整えた。そこでは、教皇使節の法的・制度的概略を示し、理念的な位置づけを資料に基づいて提示するとともに、中世の教皇の外交における使節派遣の事例を挙げ、教皇の意思を伝える有効性とその限界を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収まらない中、当初計画していた国外出張は断念せざるをえず、現地文書館等における史料調査は停滞した。出張に充てる予定だった予算は、部分的に研究文献などの購入に用いたが、一部は次年度に繰り越さざるをえなくなった。もっとも、刊行史料や研究文献の調査を進展させることはでき、またオンラインでドイツの研究者たちと有益な議論をする機会も得られ、一定の研究の進捗はあった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、今年度着手した公会議主義についての考察を、先行研究をさらに収集・検討することによって深める。第二に、代理という概念を柔軟に拡張させ、宣教活動などにおいて教皇権が関わる翻訳・通訳活動についての考察を行う。一つの言語から他の言語への転換において元のものとそれに代わるものとの間の共通点と相違点、特に後者に着目する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、当初予定していた国内および国外出張を取りやめたため、旅費の支出がなくなった。感染症収束の見通しが立たないため、今回生じた次年度使用額は主に物品費等に充てるなどして、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用するよう計画を変更する。
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Research Products
(6 results)