2019 Fiscal Year Research-status Report
ブルボン公とフランス国王とのコミュニケーションからみる中近世フランス国制の変遷
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19K01065
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
上田 耕造 明星大学, 教育学部, 准教授 (10760621)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブルボン公 / フランソワ1世 / 諸侯 / 王権 / ブルボン公シャルル3世 / アンヌ・ド・フランス / シュザンヌ・ド・ブルボン / カール5世 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスの大諸侯であるブルボン公シャルル3世の動向と彼を取り巻く環境に注目しつつ、15世紀末から16世紀初頭にかけてのフランス国制の特徴や社会の変化について検討していくのが本研究の主題である。研究を進めるにあたり、次の三つの課題を設定した。1)15世紀末から16世紀初頭における貴族層再編 2)ブルボン公シャルル3世とフランス以外の貴族とのネットワーク 3)ブルボン公シャルル3世とフランス国王とのコミュニケーション。初年度では、課題1)に関わる史料の収集と具体的な検討を行い、また課題2)に関する史料についても一部入手した。課題1)の検討については、まず、ブルボン公シャルル3世がフランス王フランソワ1世に対して起こそうとした反乱計画の動機及その詳細な過程に関して調べ、同時にこの反乱計画にどのような人物が参加し、また参加せず国王側についたのかについて明らかにした。次にこの成果とブルボン公が15世紀中頃に起こした反乱に参加した人員と比較してみた。その結果、かつての反乱では様々な諸侯がブルボン公の反乱に加わっていたのが、シャルル3世の反乱計画では、諸侯レベルの協力者は少なく、そのほとんどが自らの家臣あるいは外国の勢力であったことがわかった。そして、この背景には、15世紀末から16世紀初頭にかけてのフランス内における貴族層再編の動きがあったことを明らかにした。 ブルボン公シャルル3世の反乱計画にフランス外の勢力が関わっていることからも明らかなように、ブルボン公の行動はフランス内の事情だけで起こされたものではなかった。さらに言えば、当該期のフランス国政、国制あるいは社会の変化についても、フランス外の勢力の動向が関係している。以上の視点から課題2)を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1)に関しては、「研究実績の概要」で詳細に記したように、ある程度研究が進み、成果を得ることができた。ただし、さらに細かくブルボン公シャルル3世とフランス貴族との関係を調べ、フランス国内におけるシャルル3世の人的ネットワークを明らかにしていく必要はある。課題2)に関しては、1月にパリにある国立古文書館を訪れ、この課題に取り組むために必要な史料を入手してきた。具体的には、ブルボン公シャルル3世と妻シュザンヌの遺言書、それとブルボン家とゴンザガ家、サヴォワ家、ロレーヌ家との結婚関連文書である。これらをもとに、ブルボン公が持っていたフランス以外の勢力との人的ネットワークを明らかにしていく。課題2)の取り組みから、シャルル3世が持っていたフランス内外を含めた全体の人的ネットワーク像が浮かび上がってくるはずである。こうして明らかとなる具体的なシャルル3世を取り巻く状況を踏まえ、改めて課題3)である、ブルボン公シャルル3世とフランソワ1世とのコミュニケーションに着目し、両者の関係性を検討していく。その結果として、15世紀末から16世紀初頭のフランスにおける諸侯と王権との関係、そして当該期におけるフランス国制の特徴と社会の変化を浮かび上がらせていく。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは課題2)に取り組んでいく。入手した史料はマニュスクリプトの状態なので、最初に翻刻作業が必要である。正確に文字を読み取ったあと、解読と分析を進めていく。ブルボン公シャルル3世と妻シュザンヌの遺言書に関しては、彼や彼女が財産をどのように処理しようとしていたのか、そしてその遺言書にはどのような人物が関わっていったのかを明らかにし、ブルボン公による所領運営の状況を把握し、またブルボン公が持つ人的ネットワークの一部を読み解いていくつもりである。次にブルボン家とゴンザガ家、サヴォワ家、ロレーヌ家との結婚関連文書からは、ブルボン家が婚姻政策において、どのような方面の、どのような人々と人脈を築こうとしていたのかについて追求していく。特にイタリアのゴンザガ家との結婚は、アルプスを越えた姻戚関係の構築であり、なぜこの家系がブルボン家の結婚相手として選ばれたのかは興味深い。そして、この点に関しては結婚契約書が残っているので、それの読解と分析を進め、両家の結婚の背景を詳細に検討していくことができるであろう。こうしてブルボン公が持つ全体的な人的ネットワークを明らかにした上で、「現在までの進捗状況」でも記したように、課題3)に取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
3月に予定されていた国内での研究会が新型コロナの影響により中止となり、旅費を申請しなかったため次年度使用額が生じた。次年度の旅費に当てたいところであるが、新型コロナの影響で国内、国外ともに旅行がしにくい状況である。旅費で使用できない際は、研究に必要な書籍の購入や物品の購入に当てたいと考えている。
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