2021 Fiscal Year Research-status Report
ブルボン公とフランス国王とのコミュニケーションからみる中近世フランス国制の変遷
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19K01065
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
上田 耕造 明星大学, 教育学部, 准教授 (10760621)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブルボン公 / フランソワ1世 / 諸侯 / 王権 / ブルボン公シャルル3世 / 遺言書 / シュザンヌ・ド・ブルボン / カール5世 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に引き続き、16世初頭のフランスにおける諸侯と国王とのコミュニケーションに関する研究を、ブルボン公シャルル3世を事例に進めた。昨年度に続きブルボン公シャルル3世とその妻であるシュザンヌ・ド・ブルボンの遺言書を用い、先の課題に関する検討を進めたが、今年度の成果としては、両者の遺言書(マニュスクリプト)の翻刻が進み、内容の分析がしっかりと行えるようになったことが挙げられる。この二人の遺言書は、これまでの研究においてほとんど使用されておらず、内容の詳細な分析とそこからブルボン公と国王とのコミュニケーションの痕跡を捉えようとする研究は皆無であり、この点は本研究者のオリジナルといえる。 翻刻の結果、シャルル3世とシュザンヌの二人の遺言書には、ブルボン家財産の相続に関する内容が詳細に記されていたことがわかった。具体的には、当時ブルボン家の財産は、父ピエール2世が死去していこう、娘のシュザンヌが継承したのだが、遺言書では、シュザンヌの死後、その財産の全てが夫であるシャルル3世へと継承されることが記されていた。また、遺言書内には、ブルボン家財産の継承に関わる者たちに向けられたメッセージがある点も確認できた。その対象者は遺言書内に明確には記されていないのだが、これまでのブルボン家財産の継承経緯を辿ると、ブルボン家財産の継承には、しばしばフランス王からの承認が必要であることがわかり、二人の遺言書はブルボン家の財産が妻シュザンヌから夫シャルル3世へと継承されることを、王であるフランソワ1世に確認していることが判明した。 以上、遺言書を用いた研究によって、16世紀初頭のフランスにおいて、諸侯たちは国王とコミュニケーションを取る中で、所領の維持させていたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
様々な面で新型コロナウイルス蔓延の影響を受けている。一つは、フランスへの渡航ができず、必要な史料を手に入れることができていない。また、オンライン授業への対応を余儀なくされたことで、研究にかける時間が少なくなってしまった。以上のような状況から、研究はやや遅れているが、その中でも徐々にではあるが、着実に研究成果は蓄積されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、遺言書の分析が終わり、一定の研究成果を得ることができた。しかし、遺言書の内容分析だけでは、当時のブルボン公シャルル3世やシュザンヌが置かれていた状況の一端しかわからない。それを補うためには、遺言書の内容を補強する史料が必要となる。研究を進めるためには、やはり渡仏し新たな史料を入手する必要があるが、この点に関しては、今年度明るい見通しを立てることはできない。新型コロナウイルス蔓延の状況が落ち着けば、渡仏する予定であるが、もし、それが不可能であれば、これまでのまでの入手した史料をもとに研究を進めるしかない。幸い、この科研の一年目に渡仏ができ、史料を一部入手してきたので、それが利用可能である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延の影響を受け、渡仏して史料収集ができなかったこと、また参加予定であった学会がオンライン開催となったことなどがあり、旅費などの使用がなかったため、次年度への繰り越しとなった。今年度は、新型コロナウイルス蔓延の影響が落ち着けば、渡仏する予定である。
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