2020 Fiscal Year Research-status Report
古典期のマケドニア王国の権力者崇拝に関する研究:フィリポス2世の治世を中心に
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19K01073
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
澤田 典子 千葉大学, 教育学部, 教授 (50311650)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マケドニア / 権力者崇拝 / 都市祭祀 / 自己神化 / フィリポス2世 / ギリシア世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる今年度は、フィリポス2世の「神格化」に関わる個々の事例を検討し、権力者崇拝の発展におけるフィリポス2世の歴史的意義を明らかにするという研究目的のため、昨年度の成果(権力者崇拝という現象を考えるための論点整理、およびアレクサンドロスの「神格化」をめぐる論点のうちフィリポス2世の「神格化」に関わる論点の整理・検討)を踏まえて、昨年度に着手したフィリポス2世の治世以前のギリシアポリスにおける「都市祭祀(civic cult)」についての検討をさらに進めた。とりわけ、そうした「都市祭祀」として重要と思われるアテネのハグノン(アンフィポリス)とスパルタのリュサンドロス(サモス)の事例を重点的に考察した。また、フィリポス2世の治世以前のマケドニア王の「神格化」を示唆する事例として、ピュドナにおけるアルケラオスの事例とアンフィポリスにおけるアミュンタス3世の事例についての検討を行った。さらに、フィリポス2世自身に関わる事例について、都市の側から、すなわち「下から」「自発的に」提起された「都市祭祀」の事例と、支配者や王朝の側から、すなわち「上から」体制化された「王朝祭祀(dynastic cult)」の区別を念頭に置き、まずはフィリポス2世に都市の側が「自発的に」捧げたとされる「都市祭祀」として、アンフィポリス、フィリッポイ、フィリッポポリス、エレソス、エフェソス、アテナイの事例を史料に即して分析し、ギリシアポリスにおける「都市祭祀」の伝統の文脈のなかで考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標としていた、フィリポス2世以前のマケドニア王の「神格化」を示唆する事例の検討、フィリポス2世に捧げられたとされる「都市祭祀」の事例(アンフィポリス、フィリッポイ、フィリッポポリス、エレソス、エフェソス、アテナイ)の検討、という課題に取り組み、一定の成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度は、今年度行ったフィリポス2世に捧げられたとされる「都市祭祀」の事例についての検討という課題に引き続き取り組むとともに、フィリポス2世自身の「自己神化」の志向を示唆する事例(前336年のアイガイでの祝典行列のエピソードと、フィリポス2世がオリュンピアの神域に建立した円形堂フィリペイオン)の検討を行う。そのうえで、これまでの考察を総括し、フィリポス2世はいかなる意味でアレクサンドロスの「神格化」やヘレニズム時代の君主礼拝の「前例」であったのかを検討し、権力者崇拝の発展におけるフィリポス2世の歴史的意義を明らかにする。
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