2020 Fiscal Year Research-status Report
亡命オーストリア社会民主主義者の戦後構想と新自由主義の起源
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19K01074
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小澤 弘明 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (20211823)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新自由主義 / 社会国家 / 亡命 / 戦後構想 / オーストリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新自由主義の起源及び社会主義国家や国際的な社会民主主義の運動と新自由主義との関係についての基本論文を収集し、その分析を行った。学術論文については30本程度を分析し、ドイツのオルド自由主義とモン・ペルラン協会との関係、チリとペルーへのシカゴ学派の経済学の影響、マイケル・ポランニーと初期新自由主義との関係などについて理解を深めた。とりわけ、世界的観点から新自由主義を考える場合に、グローバル・サウスの問題を考慮に入れることが重要であるとの研究に接し、視野の一層の拡大が必要であることが明らかとなった。その点では、ラテンアメリカ、特に1945年から1962年にかけてのペルーにおける新自由主義の起源についての研究から得た示唆は重要であった。 社会主義国家との関係では昨年度に引き続き、ハンガリー、ポーランドについての研究を参照した。現在では、体制転換後のロシア・東欧における新自由主義の起源を社会主義時代に求める視点は定着しつつあると言える。社会民主主義との関係では、イギリスのニュー・レイバーと新自由主義との関係を文化政策の観点から分析した論文、オーストラリア労働党と新自由主義との関係についての論文を引き続き分析した。 また、新自由主義の起源を探るためには、現代世界における自由主義経済と非自由主義政治の相補性についての議論や、歴史的に自由主義の非自由主義的起源を探る試みから新たな認識を発展させる可能性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗のためには、刊行文献だけでなく未刊行の文書館資料を含めて分析を行うことが必須の課題である。このため本年度も、海外文書館・図書館の調査を実行しようとしたが、新型コロナウイルスの流行のため、資料調査のために渡航予定であった、イギリス、オランダ、スウェーデン、オーストリア、 アメリカ合衆国のすべての国・地域に対して渡航中止勧告が出たため、海外渡航そのもの及び海外における研究をいっさい遂行することができなかった。 また、海外調査の代替として、新自由主義を推進したモンペルラン協会と日本との関係を分析すべく、国立国会図書館の木内信胤関係文書(世界経済調査会関連)の利用を計画しているが、緊急事態宣言下で県境をまたぐ移動の自粛が求められているため、いまだ本格的な分析に至っていない。経済同友会の新自由主義推進委員会については、周年史や刊行物の分析をほぼ終了した。 上記のように一次資料の入手については全体として困難を抱えているものの、二次文献については電子テキストを含めて継続的かつ着実に収集した上で分析を進めている。特にグローバルサウスからの視点や、新自由主義に先駆ける自由主義の抱える問題についての理解を深めることが出来た点は重要であった。そのため、初年度に引き続き二年目の研究の進捗状況全体としては、「やや遅れている」という評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究を推進するためには、やはり海外文書館・図書館の利用が必須であるため、渡航中止勧告が解除され、海外文書館・図書館が開館されるという条件で、積極的に利用を進めたい。また、これらの開館には時間差があるため、研究計画の当初に予定していた順序にかかわらず、国・地域・機関ごとに利用可能となる条件を見据えながら柔軟に研究を遂行したい。 来年度中に上述のような条件が整わない場合には、次善の策として文献の複写サービスやデータ化サービスを積極的に利用することによって、一次資料の入手につとめることとしたい。これも、ロンドン、アムステルダム、ストックホルム、ウィーン、スタンフォードにおける図書館・文書館の開館状況を見据えながら、柔軟に利用の順序を考慮したい。また、一次文献については、比較的入手が容易である雑誌・同時代文献等、同時代の刊行物を優先的に収集・分析することとする。 二次文献については、順調に収集が進んでいるが、今後は中国・ベトナムなど社会主義圏の経済改革と新自由主義との関連を歴史的に把握すること、ラテンアメリカ以外のグローバルサウスにおける事例についても視野を広げて収集・分析を試み、比較の軸の複数化を図りたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行の結果、海外文書館・図書館における調査・研究が不可能になったため、旅費(海外旅費)のすべてを執行することができなかった。また、その調査・研究によって生じる予定であった未刊行文書の整理に要する人件費・謝金についても部分的にしか執行することができなかった。他方、二次文献の収集については順調に推移したため、物品費はほぼ計画通りに使用することができた。 次年度は執行できなかった旅費について対象地域への渡航が可能となることを前提として、計画的な使用を心がけたい。また、条件によっては短期渡航を複数回とするか長期渡航によって効率化を図るかについて、柔軟に対応することとする。また、海外旅費の執行が順調に進めばその分資料整理のための謝金等の執行が進むと考えられるため、次年度の予算執行を全体として確実に進めることが可能となる予定である。資料整理のための謝金等の執行は、研究の進展に合わせて進めたい。 なお、未刊行の文書館資料等の収集が状況により不可能となる場合には、雑誌と同時代文献の複写・データ化に注力するため、旅費ではなく相対的に物品費に振り替えを行うこともありうる。この研究計画の一時的変更は、状況の変動を検討しながら実行することとする。
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Research Products
(3 results)